もちろん、今は流行っているようですけど、この写真が撮られた時点(この画像は rockin'on 93年7月号の表紙を元にしています)ではそうではありませんね(^^;) むしろ、アウト・オブ・デイトないでたちであるといえましょう。スウェードというのはいつも時代から外れたところにいるのでしょう。この写真はそれを象徴的に表しているのではないでしょうか。
当時のこの人にとってファッションというのは、商品の包装のようなものだったのではないでしょうか。しかし、この包装は煽情的で安っぽいヒモに見えるようにデザインされています。良識のある者なら目を背けたくなるような着こなし、それに男性が着るにはフェミニンすぎるようです。(とは言うものの、このような恰好をして不思議と似合い、下品になる寸前で止まっているのは、やはり着る人自身の素材が良いから、どこかあどけなさがあるからなのでしょう) 包装とは決して中身に等しいものではありませんが、上質の商品であればパッケージまで入念に計算され尽くすものなのです。
このスタイルが与える印象については、もちろん彼には考えが及んでいたことでしょう。当然のことながら、強い否定的な反応も返ってくることを予想しながら、敢えて挑発的にたたずむその姿、心意気に私はエールを送りたい(正確には送りたかった!)。完全に自己を捨てきっています。 すべてはバンドが売れるため!そんな意気込みが伝わってまいりますね。素敵です。
この戦略は大成功をおさめましたが、日がたつにつれて実体とのギャップが激しくなってきたのではないでしょうか。強烈だっただけに、まさに印象だけが一人歩き、着ぐるみを着ているかのような心地も味わったのではと、私は推測します。
時が流れれば物も変わる、人も変わる、 everything will flow です。
相変わらずのグッドルッキングですが、今では普通の人がマネると本当につまらなくなって、そこらへんに埋没してしまうような、ごくごく普通に見えるファッションをしています。包装ではなく、中身で勝負、というわけですね。ですが、それでもやはり、今流行りのスタイルはしていないのです。ファッションも、音楽も…。
スウェードはスウェードでしかありません。かれらだけが、並び立つもののない、唯一無二の存在なのです。
4.Dec.2000