キース・アウト
(キースの逸脱)

2019年 4月

スマホの方はこちらへ→

by   キース・T・沢木

サルは木から落ちてもサルだが、選挙に落ちた議員は議員ではない。
政治的な理想や政治的野心を持つ者は、したがってどのような手段を使っても当選しておかなければならない。
落ちてしまえば、理想も何もあったものではない。

ニュースは商品である。
どんなすばらしい思想や理念も、人々の目に届かなければ何の意味もない。
ましてメディアが大衆に受け入れられない情報を流し続ければ、伝達の手段そのものを失ってしまう。

かくして商店が人々の喜ぶものだけを店先に並べるように、 メディアはさまざまな商品を並べ始めた。
甘いもの・優しいもの・受け入れやすいもの本物そっくりのまがい物のダイヤ
人々の妬みや個人的な怒りを一身に集めてくれる生贄
そこに問題が生まれれば、今度はそれをまた売ればいいだけのことだ。














2019.04.13

 「モンペ」と思われたくないけれど…担任の言動に不信感!
大中 千景
[LIMO 4月12日]


モンペ、モンペと騒がれている昨今ですが、子どもの担任の対応にモヤモヤした、担任に不信感を抱いている…という方も多いもの。

これって担任にクレーム入れていいのかどうか…という小さな「イラッ」が蓄積されている、でも、ひとつひとつは些細なことだから、クレーマー扱いされてもなぁ…なんて悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。


(中略)

他にも担任にモヤモヤしたエピソードをお持ちの方はたくさんいるようです。

「娘が特定の子から無視をされるように。担任に相談すると『もちろんした方が悪いが、された方にも問題がある』と言われた」(小学4年生の女の子の母)

「隣の席の男子に『死ね』とか『学校に来るな』と言われていた娘。担任に席がえをお願いしても、『あの子はもうすぐ転校するから』といって取り合ってくれず。三ヶ月もそのままに」(小学5年生の女の子の母)

「間違えて上級生が掃除で使うホウキを持ちだしたらしい我が子。担任が一緒に返しに行こう、と言ってくれたらしいけど…。担任は上級生に向かって開口一番『ごめんね、この子、バカだから』と言い放ったらしい」(小学2年生の男の子の母)

「担任が一部の頭のイイ子だけニックネームで呼ぶのがイヤだ、と息子」(小学6年生の男の子の母)

聞いてみると出てくるわ出てくるわ、あきれたエピソードの数々。中にはクレームを付けるべきでは…?というものも多々ありました。

どのお母さんも「最近モンペがどうとかうるさいから、私が学校にクレームを言うことでモンペ認定されて、ますます子どもの居場所がなくなるのでは…」という心配をされています。

では、このまま黙って時が過ぎ去り、担任が変わるまで待つのが得策でしょうか?

そんなことはないはずです。


(中略)

感情的にならずに

「子どもがこういう風に訴えて、少し、とまどい、悲しい気持ちになったようです。子どもからの言葉しか聞いてないのでなんとも言えませんから、一度状況確認のためにもそのときのことを詳しく教えていただけませんか?」と聞いてみて、回答に納得できなければ改めて「それは納得できません」と伝える。

先生に働きかけてくれた、というだけでも子どもはとても嬉しく、頼もしく思うはずです。

子どもの「学ぶ機会」を守ること、それも親の役割なのです。


過剰な信頼をよせないで

相手が先生だから、と過剰に信頼するのはおすすめできません。先生も人間、保護者からの訴えで学ぶこともたくさんあるはずです。「おかしい」と感じたことは、冷静かつ論理的に伝えることも必要なのではないでしょうか。

また、何かあったら子どもがすぐに報告してくれるよう、親子間の信頼関係をしっかりと構築しておくことも大切です。



 この手の問題に対する“専門家”のアドバイスにロクなものはないが、大中氏はめずらしく常識人だ。
 
「子どもがこういう風に訴えて、少し、とまどい、悲しい気持ちになったようです。子どもからの言葉しか聞いてないのでなんとも言えませんから、一度状況確認のためにもそのときのことを詳しく教えていただけませんか?」と聞いてみて、回答に納得できなければ改めて「それは納得できません」と伝える。
 こんな常識的な話が、なぜ他の評論家たちはできないのか。

 他人との神経質なやりとりは、このくらい低姿勢なところから入っていかないとあとで後悔する。
 振り上げた拳の下ろしどころを失ったり、全く予想もしていなかったような反撃を食らったり、何が起こるか分からないからだ。
 くれぐれも心しておいてほしいのは、
 
子どもは必ずしもウソをつくとは言わないが、極めて主観的な生き物だということだ。彼らの語ることはすべて「ボクの見た、ボクの世界の、ボクの物語」に過ぎない。それが客観的事実と重なるときもあればまったく反対方向にあるときもある。
 子どもの問題には心して当たらないと、とんでもないことになる。

 
 学校や担任に対する不信感の表明が正当な申し立てになるかモンスターペアレンツ的強要になるか、その分かれ目はひとえに事実の確実性と持って行き方にかかっている。

 たとえば、
 「娘が特定の子から無視をされるように。担任に相談すると『もちろんした方が悪いが、された方にも問題がある』と言われた」
 この場合、ウチの娘に問題があるかどうかはやはり決定的な問題だろう。
 
 よく言われるように、いじめ問題では一夜にして加害者と被害者が入れ替わってしまうことがある。そう考えると、もしかしたらウチの娘は昨日までのとんでもないいじめっ子で、今日、その復讐を受けているだけなのかもしれない。
 あるいは“何かというと他人に食ってかかる癖がある”とか“クラスに非協力的で委員会や当番の仕事をしない”とか、それで無視されているといった事情があるのかもしれない。
 盗人にも三分の理という。いじめる側にも一応顔を立てて話を聞いておかないと飛んでもない赤っ恥をかくことがある。

「担任が一部の頭のイイ子だけニックネームで呼ぶのがイヤだ、と息子」
 これも注意が必要だ。担任が一部の子だけをニックネームで呼ぶのは事実かもしれないが、それが
頭のイイ子なのかどうかは検討が必要なところだろう。さらに頭がイイからそうしているのか、あるいは別の理由があってそうなっているか、これも確認の必要なところだろう。

 こうした場合、十分に子どもの言うことを聞いて具体的事実を押さえた上で、それでも慎重に丁寧に、いったんは下出から出て調査をしてもらうのが肝要だ。その結果が気に入らなければ、あとから高圧的に出ればいい。それからでも遅くない。
 大中氏はそのことを、
 回答に納得できなければ改めて「それは納得できません」と伝える。
と言っているが、もちろん正しい態度である。
 
 この件については私も別のところで書いたことがあるので参考にしてほしい。
 
「ああ言えばこう言う辞典」応用編 「いじめだ、万引きだ、喫煙だ、でも………おれやってないもん。


 ところで、
 モンペは困るが、モンペと思われるのを嫌がって正しい抗議がなされないのも困る。
クレームもあとでまとまってドカッと来るくらいなら、最初から小出しに来てもらう方が楽だ。
 大中氏も
先生も人間、保護者からの訴えで学ぶこともたくさんあるはずですと書いているように、教師にとって、「今、児童生徒・保護者がこういう問題で不信感を抱きつつある」というのは差重要な情報である。 たいていの不信感は誤解から生まれているのだから一刻も早く解いておく必要がある。

何かあったら子どもがすぐに報告してくれるよう、親子間の信頼関係をしっかりと構築しておくことも大切です。
は親子間だけでなく、親と教師の間でも重要なことなのだ。







2019.04.16

 ツーブロックはダメ?校則に疑問の声
学校「高校生らしくない」


[西日本新聞 4月13日]


春4月。多くの子どもたちが新たな学校生活をスタートさせる中、福岡市の高校2年の男子生徒(16)から気になる声が特命取材班に届いた。「なぜ、ツーブロックの髪形がだめなのでしょうか」。ツーブロックは頭頂部を長く残し、サイドや後頭部を短く刈り上げた若者に人気の髪形だ。取材班が福岡県立の高校・中等教育学校全95校の校則を調べたところ、少なくとも約3割の27校が禁止項目に明記していた。

 男子生徒は中学1年だった2015年4月、服装検査で教員の指導を受けた。「君の髪はツーブロック。校則違反だからすぐに直してくるように」。中高生の散髪も手掛ける美容師には、ツーブロックが校則違反と伝えてカットしてもらっていた。それでも教員に指摘されて素直に従い登校するも「まだだめだ」。

 もう一度、美容室で髪を切り、ほぼ丸刈りにしたがなおも認めてもらえず、
憤った保護者が学校に抗議。違反の基準や根拠を示すよう求めた。しかし学校側は「見た目で判断しており、明確な基準はない」と回答しただけだったという。

 ツーブロックはスポーツ選手や高級ホテルの従業員にもよく見かけ、清潔感が漂う。ただ、男子生徒は流行を追ったわけではなく、あくまで「さっぱりしたかっただけ」。その後も説明がないまま卒業し「なぜ違反なのか、いまだに分からない」と、もやもやした思いを抱き続ける。

      ■

 取材班は今年2月、福岡県教育委員会に県立高校の校則に関する資料を請求。入学前に配布される「新入生のしおり」などの資料約550枚が提供された。併せて全校へのアンケートも実施。生徒指導担当教諭らに頭髪などの規定を設ける意図などを尋ね、25校から回答を得た。

 頭髪については、95校のうち全日制の全93校が規定。染髪や付け毛などを禁じ、禁止する髪形として27校はパーマやそり込み、リーゼントなどと同列の扱いでツーブロックと明記していた。「技巧的」「不自然」「特異」などと表現する高校もあった。禁止する理由として、多くは「高校生としてふさわしくない」ことを挙げる。

 校則の頭髪を巡っては、熊本県の中学校で丸刈りの強制は憲法違反として生徒が学校などを訴えたケースがある。17年には大阪府立高校の女子生徒が生まれつき茶色っぽい髪を黒く染めるよう強要されたとして提訴し議論になった。

 丸刈り校則はほとんどみられなくなったが福岡県内の複数の高校は、天然パーマや生まれつき黒髪ではない生徒に対して「地毛証明」の申告を求め、小さい頃の写真の提出を求めるケースもあった。

 関西学院大の桜井智恵子教授(教育社会学)は「厳しい頭髪指導の背景には、教育現場が地域の目に気兼ねし生徒の規律を重視している現状があり、構造的な問題。生徒と向き合い、多様性を引き受ける姿勢とゆとりが学校側には求められる」と指摘した。

=2019/04/13付 西日本新聞朝刊=



 校則、特に頭髪規定に関する記事は一定の期間を置いて、どこかの新聞から必ず定期的に出てくる。それだけ根の深い問題とも言えるし、メディアが本気で追及して改善しようという気のない(だから何回でも使いまわせる)問題ともいえる。表現の自由と強要に関する重大な事件だと訴えた生徒・保護者も、大部分は卒業すると忘れてしまうらしくそれ以上継続的に追っていこうとはしない。

 だからこのまま放置しておいてもいいような話だが、それにしても今回の西日本新聞の記事は分かりにくい。

中高生の散髪も手掛ける美容師には、ツーブロックが校則違反と伝えてカットしてもらっていた。それでも教員に指摘されて
と言うが、校則違反にならないように依頼したのに校則違反――そもそも最初のヘアスタイルはどんなものだったのか見てみたいものである。

さらに、
素直に従い登校するも「まだだめだ」。
とここでもダメが出る以上、第二段階の状況も記録にとどめておきたいところである。

もう一度、美容室で髪を切り、ほぼ丸刈りにしたがなおも認めてもらえず、
と二度にわたって修正しても認められないとなれば、
憤った保護者が学校に抗議
というのも無理はない。都合3回も美容院に行けば軽く1万円は超えてしまっただろう。
 しかし学校に抗議することはない。
 
 2度も修正してなお痕跡が消せないとしたら、最初の段階でサイドが相当に刈り込まれていたはずだからである。おそらくはじめは誰が見たってツーブロック中のツーブロックだったはずだ。
 ツーブロックが校則違反と伝えてカットしてもらっていた。
 それも、
中高生の散髪も手掛ける美容師にである。
 
これはもう美容師に責任を取ってもらい、代金の返済どころではない、多額の慰謝料を請求すべき案件である。

 最近、中国人の投稿動画で、出来上がった自分のヘアスタイルが気に入らないといって担当の美容師の頭を刈ってしまった客の映像が評判になったが、ここまで気を遣っていった美容院でそんな頭にされて、なぜ生徒保護者は美容師を不問に付すのか。
 なぜ西日本新聞はお門違いの学校批判に与するのか、私には全く理解できない。


 さらに後半のまとめの段階になると一層わからない。

 熊本の丸刈り訴訟(1985)は原告敗訴だったし17年の大阪公立黒染め訴訟が
議論になったのはその通りだが、元大阪府知事橋下徹をはじめ学校側に立って論陣を張った人も少なくなかった。
 裁判の結果は分からないが、かなり胡散臭い訴訟であったことは私も覚えている(*)。
『大阪「髪染め強要」訴訟 ほとんど報じられない学校側の主張を伝える【前編】』

 それに「地毛証明」は生まれつき髪の毛の赤い子や天然パーマの子を、誤った指導から守る方策なのだ。これさえあれば黒髪やストレートパーマを強制されずに済む。それを非難するということは差別されやすい子を放置しろということなのか?

 さらに最後に専門家の口を借りて、
生徒と向き合い、多様性を引き受ける姿勢とゆとりが学校側には求められる
を結論としているが、教員に
ゆとりがないのは周知のこと、教師の働き方改革の問題として今、もっとも熱い社会問題となっている話題を、西日本新聞記者は知らないのかもしれない。

 
生徒と向き合い、多様性を引き受ける姿勢はまだしも、そんなゆとりを学校に求められても困る。仕事を減らすか人員を増やすかして「ゆとり」を生み出すのは政府の仕事だ。
 
ゆとりがあってこその丁寧な行き届いた指導である。

 このことは是非、文科省と社会に要求してもらいたい。
 そして生徒・保護者にも、
 
ツーブロック・ギリギリの頭髪なんか追究せず、教師を煩わせることもつつしめ
 
流行を追ったわけではなく、あくまで「さっぱりしたかっただけ」なら丸坊主にしろ
と、メディアは強く訴えてほしい。
 特に西日本新聞!

 

キース・アウト2019年4月R