記号操作の学習に入るためのREADINESS

 

 

1、触感覚の向上、触運動の統制、触空間の形成

  触る、握る、放す、滑らせる、押す、たたく、引っ張る等を通して、触

  感覚を高め、玩具等で遊ぶことを通して触運動をコントロールして、そ

  の結果として触空間を形成することが人間行動の高次化の第一歩である。
 

2、視感覚の向上、視運動の統制、視空間の形成

  チラリと見る、部分を見る、全体を見る等を通して、視感覚を高め、

  よく見る(注視)、動いているものを目で追う(追視)、見比べることを

  通して視運動のコントロールをして、その結果として視空間を形成する。

  外界を認知することが思考の始まりであり、触空間と視空間の形成は、

  そのために大切なことである。


3、手と手、目と手の協応動作

  両手で持つ、.持ち替える等を通して手と手の協応動作を向上させ優勢

  半球に基ずく利き手と反利き手や、働き手と支え手に分化する準備を行

  う。見た物に手を伸ばして触ったり、持ったり、振ったりすることを通し、

  目と手の協応動作を向上させ、二つの物を触ったり見たりして弁別する。

  物を容器の中に入れたり容器から出したりする、いろいろなおもちゃを

  見て手を伸ばして握り、遊ぶことなどができるようにする。


4、延滞

  記銘、記憶、想起の過程を目と手の協応動作を通して、注視する、追視

  する、手を動かしてとるという一連の学習を行う。


5、形の弁別

  はめ板による○、△、口の形の弁別学習。


6、同じ」の概念形成

  具体物と絵カードを用いて見本合わせの手法で行う、「同じ」の概念形

  成の学習。

  見本と正選択肢一つ、誤選択肢一つを用いる。

 (1) 具体物と絵カードの組み合わせによる学習の系統性

     step1 具体物と具体物

     step2 具体物と絵カード

     step3 絵カードと絵カード

 (2) 教材の親和性による学習の系統性

    具体物の場合

    @ 具体物と無意味なもの

    A 好きなものと嫌いなもの

    B 好きなものと好きなもの

    C 身の回りにあり知っているもので、好きでも嫌いでもないもの

 (3) 絵カードの種類による学習の系統性

    @ 凹図形

      ・輪郭線図形

            ・面図形

    A 凸図形

      ・輪郭線図形

      ・面図形

    B 描いた絵カード

      ・輪郭線図形

      ・面図形 (写真等)

 (4) 具体物や絵カードの持っている要素による難易度

    @ 概念、形、色、材質、音、光、重さ、光沢、粗滑、大きさ等が、

       はっきりと異なっているものの弁別

        例. 〔コップ] と 〔靴]

           〔おもちゃのトラック] と [鈴]

    A 要素を一つずつ順次取り込んだ似たものの弁別  

        例. [コップ] と 〔茶碗]

           [おもちゃのトラック] と [三輪車]

    B 全ての要素が似ているものの弁別

        例. [コップ] と [牛乳びん]

           [おもちゃのトラック] と [おもちゃのバス]

      イ. 基本図形十α

           例. [りんご] と 〔りんごとみかん]

               [トラック] と [トラックの外に人が立っている]

         みかんや人の位置によって難易度が異なる。

            a. 離れている

            b. くっついている

            c. りんごやトラックの絵の中に取り込んでいる

       ロ. 基本図形の変化

           例. [丸ごとのりんご] と [かじったりんご]

              〔空のトラック] と [荷物を積んだトラック]

          輪郭線の変化の部位や、変化している部分の大きさによって

          難易度が異なる。

            a. [人が立っている] [寝ている]

            b. [人が立っている] [座っている]

            c. [人が立っている] [腰掛けている]

            d. [人が立っている] [両手を上げている]

              e. [人が立っている] [片手を上げている]

             f.  [人が立っている] [片足立ちをしている]

               g.   [靴を履いて立っている] [長靴を履いている]

                         h.  〔帽子を被って立っている] [被っていない]

          絵カードの部分の変化には、その要素によって難易度が異な

          る。例えば、eにおいては、上げた片手に [旗を持たせる]

          〔ボールを持たせる] [何も持っていない]、という順にな

          る。また、gでは [長靴を履いているもの] と [はだしのも

          の] との方がよりやさしい。つまり、付加したことによって

          よりやさしくなる場合と、付加するものを取り除くことによ

          ってよりやさしくなる場合とがある。このことは、口のみな

          らず、全ての段階において全ての絵カードに共通することで

          ある。

       ハ. 基本図形内の変化

           例. [着ているシャツに犬のマークが付いているもの] と

                                 [付いていないもの]

              [運転手の乗っているトラック] と

                            [乗っていないトラック]

            a. [犬のマークが付いているもの]と

                            [付いていないもの]

            b. [牛乳びんにいっぱい牛乳が入っているもの] と

                              [入っていないもの]

            c. 〔8分目入っている牛乳びん] と

                       [3分の1程度入っている牛乳びん]

            d. [犬のマーク] と [パンダのマーク]

        ニ. 基本図形の位置と方向の変化

            例. [正面向きのトラック] と [横向きのトラック]

           二つ以上の基本図形の位置関係と方向で難易度が異なる。

            a. [机の下に椅子が入っているもの] と

                             〔椅子が出ているもの]

            b. [横になっている机] と [縦になっている机]

           上下・左右の要素はこの段階ではできるだけ入れないように

           する。上下・左右については、8の”空聞概念の形成”の上

           下・左右のところで行うようにする。

        ※ 全体の変化と部分の変化及び、変化している部分の位置(上・

           中・下・右・真ん中・左)によって、難易度が異なる。

 (5) 仲間集め

    (4)のBの学習が終了した時点で、仲間集めの学習を行う。

      例.くつ

    @ 全く同じ [くつ] の絵カード数枚と、靴でない絵カード数枚を分

       ける。

        イ. 靴でない絵カード数枚は、全て違うもの

        ロ. 靴でない絵カード数枚は、全て同じもの

        ハ. 靴でない絵カードの難易度

           a. 靴と概念がかけ離れているもの…車、スプーン

           b. 徐々に概念を近付ける

                上着、セーター

                ズボン、パンツ

                靴下

    A 男の靴と女の靴

       <男の靴の絵カードによる難易度>

        イ. 全く同じ絵カード

        ロ. 色、形、大きさが同じで模様の異なるもの

            例. [犬のマークの付いている靴] と

               [パンダのマークの付いている靴]

        ハ. 色、形、大きさが同じでデザインの異なるもの

            例. [紐の付いている靴] と [付いていない靴]

        二. 色と大きさが同じで形の異なるもの

            例. [運動靴] と [革靴]

        ホ. 大きさだけが同じもの

            例. [青い靴] と [白い靴]

        へ. 大きさも異なるもの

            例. [大人の靴] と [子供の靴]

    B いろいろな靴の仲間集め

        靴でない絵カードを数枚用いる

        イ. 男の靴・女の靴とそれ以外のもの

        口. いろいろな靴 (革靴・運動靴・あみあげ靴、長靴等) と

                                   それ以外のもの

        ハ. いろいろな靴とスリッパ・草履・サンダル・下駄等の分類

           これはかなり難しいので、この段階でできなければ学習しな

           い。
 

7、未測量の理解

 (1) 大小、長短、多少、高低 等

 (2) 大中小 等
 

8、空間概念の形成

 (1) 方向

    @ 運動の方向

    A 平面図形の方向

 (2) 順序

    @ 順序に入れる、取る

    A 順序に差す、抜く

   〈方向との関わりにおける学習順序〉

    @ 方向がないもの ・・・・ ビー玉、ゴルフボール

    A 方向があるもの ・・・・ 管抜き、棒さし、乾電池入れ

 (3) 定位

   定められた空聞の中に見本と同じものを置く。

 (4) 上下

   具体物と絵カードを用いて見本合わせの手法で行う、上下の概念形成の

   学習。

   見本と正選択肢一つ、誤選択肢一つを用いる。

   〈基準の違いによる難易度〉

    @ [テーブルの上のりんご、テーブルの下のりんご] の上下

    A [滑り台の上に子供がいる、下にいる] の上下

    B ツードアやスリードアの冷蔵庫の開いているドアの部分の上下

    C タンス等の開いている引出しの上下、下駄箱や本棚で物が置いて

       ある棚の上下

    D 平屋や二階建ての家の上下

    @〜Cは、必ず、具体物やおもちゃで操作してから、絵カードの学習

    を行う。

    絵カードは、付加するものの上下の弁別の学習であるが、その前に付

    加するものが、有るものと無いもので学習を行う。

    例えば、@においては、

     [テーブルの上下のいずれかにりんごがあるもの] と  

     [りんごがないテーブルのみ] の絵カード
 
 (5) 左右

   具体物と絵カードを用いて見本合わせの手法で行う、左右の概念形成の

   学習。

   見本と正選択肢一つ、誤選択肢一つを用いる。

     <基準の違いによる難易度〉

    @ 基準の外のもの

        例. [人が右側に犬を連れているもの] と

                      [左側に連れているもの]

    A 基準そのものの変化

        例. [人が右手を上げているもの] と

                      [左手を上げているもの]

    B 基準内の変化

        例. [シャツの胸ポケットが右側にあるもの] と

                              [左側にあるもの]
 


 おもちゃを使って操作したり、具体的に行動したりしてから絵カードの学習に

はいる。絵カードでわかりにくい時は、触運動を伴うことによってわかりやすくできる。

例えば、上下ではりんごのシールを貼らせる、左右では、犬のシールを貼らせる、

など。

 付加するものの無いものから学習を行う。 [左右のどちらかに犬のいるもの] と

[いないもの]、 〔左右のどちらかの手を上げているもの] と [上げていないもの]、 

[左右のどちらかにポケットのあるもの] と [無いもの]。 付加するものに、さらに

付加してやさしくすることができる。 [上げた右手に右向きの旗を持たせる]、 [上げ

た左手に左向きの旗を持たせる] [胸ポケットに動物や花のアップリケを付ける]。
 
 上下と左右では、基準がより普遍的な上下の方がよりやさしい。

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