蒼井上鷹 13
	バツリスト

　『人生相談始めました』が蒼井さんらしくもなくうまくまとまっていた（失礼）だけに、本作も興味津々で読み始めたが…やっぱり蒼井上鷹は蒼井上鷹でした。

　自殺した息子・和広が遺した1冊のノートには、自殺に追い込まれた原因となった人物たちの名が記されていた。何としても息子の無念を晴らす。和広の父・嶋津は老体にムチ打って復讐に乗り出そうとする。そこへ強力な助っ人集団が現れた。

　設定だけならかなりヘビーなはず。帯には「司法に代わって悪を裁く――!?」などと書かれているから、てっきり必殺仕事人のような乗りの作品なのかと思ったわけである。ところが、こんな設定にも関わらず、まったく重くない。むしろ苦笑してしまう。

　もう書いてしまうけども、本当に復讐するわけではない。喫茶店「×」に集まる復讐者集団は、嶋津には「バツリスト」に載った連中を始末したように見せかけ、嶋津が殺人犯にならないようにしようとする。「バツリスト」には何人も載っているため、その度に一芝居打つことになる。なお、「バツリスト」とは、復讐者集団そのものも指す。ああややこしい。

　あのさ…こんな無理がありすぎる計画を実行するくらいなら、全力で嶋津を説得するか、一切関わらないか、どっちかにしろっての!!!!!　1回だけでも無理があるのに、何度も繰り返せば当然ボロが出まくる。死に役の男も、最初は面白半分だったが…。

　時には、「本物」の復讐対象を警察に突き出したりもする。渋々納得はしつつも、自ら成敗したい嶋津には欲求不満が溜まる。そしてガス抜きのためにまた一芝居…。

　終わりなき復讐をどうやって決着させるのか?　終盤になるともうぐちゃぐちゃである。そんなこと聞いてねーよという情報が頻出し、あーもう結局何が真相なんだよ?????　って、そんな結末なら今までの涙ぐましい努力は何だったんだ!!!!!

　この方は長編には向いていないと結論づけざるを得ない。というより、各社編集者は何をしている?　内容を整理するだけでもかなり印象が違うと思うぞ。あまり干渉しすぎると、独特の空気が失われるかもしれない懸念はあるけどさ。