有川 浩 05


図書館内乱


2011/05/08

 『図書館戦争』に続くシリーズ第2弾は、早くも風雲急を告げる?

 一、両親攪乱作戦。前作でも触れていたが、郁は両親に防衛員であることを告げていなかった。両親が郁が勤務する関東図書基地に仕事ぶりを見学に来ることになり、図書特殊部隊を巻き込んだ偽装作戦が展開される。必死に図書館員のふりをする郁が涙ぐましい。やはり親は子を案じるものだ。本作中、唯一微笑ましい話。

 二、恋の障害。上官の小牧には、中澤鞠江という顔なじみの女の子がいた。彼女は耳が不自由だった。小牧がある本を鞠江に薦めたことから、良化特務機関に連行されてしまった…。難癖としか言いようがない。メディア良化委員会がますます嫌いになること間違いなし。なお、小牧が薦めた本『レインツリーの国』は、新潮社より実際に刊行された。

 三、美女の微笑み。寮では郁のよき相談相手である柴崎だが、実は…。柴崎のような事情は特別ではなく、多くの読者が共感できるのではないか。現実社会でも物議を醸した「人権問題」に、戸惑う各図書館。最終決定に無念さを隠せない郁。何が正解なのだろう。朝比奈という男が柴崎に接近してくるのだが、これが後の伏線になっている。

 四、兄と弟。詳しい事情は伏せるが、手塚に兄がいることが明かされる。武蔵野第一図書館のサイト内に、『一刀両断レビュー』なるものが開設されていた。内容はただ貶しているだけ。『レインツリーの国』も…。こういう書評を名乗りつつ単なる罵詈雑言を並べたサイトが、実際にあるのはご存知だろう。反面教師にしたい、自戒を込めて。

 ところが、事態はこれだけでは済まなかった。五、図書館の明日はどっちだ。罠に嵌められた郁。裏で手を引いていたのは…。彼の理屈には一理あるし、良化特務機関と図書館が武力衝突を繰り返しているのは健全とは言えまい。しかし、彼が提唱する図書館のあり方が理想郷とも思えない。この男は、今後どんな手を打ってくるのか。

 派閥争いなどゴタゴタが多く、「笑っていただいてなんぼの本」とは言い難い。主要な登場人物の違う顔や、裏事情が明かされる点も特徴と言える。郁だけ裏表がなく、相変わらず愚直。その点が本作の救いかもしれない。もう付き合うしかないな。



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