有川 浩 20


シアター!2


2011/08/23

 『シアター!』の続編である。鉄血宰相・春川司の管理の下スタートを切った、新生「シアターフラッグ」。その第1作『掃きだめトレジャー』は、千秋楽の予期せぬトラブルはあったものの、作品としては成功を収めた。上々の滑り出しかと思いきや…。

 シアターフラッグを潰す気満々だったはずの司だが、どうやら運営から手を引いた後のことも考えているらしい。役者たちに持ち回りで制作を担わせるという。確かに、名の知れた劇団には必ず優秀な制作者がいる。役者だけでは劇団は回らない。

 ところが、本作ではシアターフラッグの団結を乱すトラブルが次々起きる。発端となったのは…現実にもよくある話だとだけ書いておこう。多くの読者に似たような経験があるだろう。もちろん僕にも。それだけに、本当に腹立たしい。

 前作には登場しなかった旧メンバーが絡んでくるが、現メンバーの役者としてのプロ意識を見せつけられる。ただの引き立て役である。まあ、あまり深刻な展開にしてしまうと、有川浩作品らしさが、このシリーズのよさが失われてしまう。それでも胸がすっとした。役者だけでは食べていけない彼らほどのプロ意識を、僕は仕事に持っているだろうか。

 そんなプロ意識が高い現メンバーたちの人間模様は、さらに複雑。感情をむき出しにし、意見をぶつけ合う。シアターフラッグが好きだから。本気だから。司だけがやけに冷静に映るが、元演劇青年の上司に相談したり、色々と考えているんだな。

 本作のクライマックスと言えるのが、巧がやってしまったシーン。会社員でも似たようなシチュエーションはあるだろう。正しいことを言った巧。しかし、同時に激しい後悔を感じてもいた…。事情を知った司の言動と行動力にぐっときた。だが、この一件は演劇の世界の特殊性、閉鎖性を端的に示していることも事実なのだ。

 ああっ、もったいぶった終わり方! と思ってあとがきを読むと、このシリーズはもう1作で完結するとのこと。ここまで来たら、愛すべきシアターフラッグの行く末を見届けたい。果たして300万円は返済できるのか、そして…。



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