綾辻行人 13


四〇九号室の患者


2000/06/17

 本作は中編だが、これ一編のみで単行本刊行された。その後、中編集『フリークス』にも収録されている。綾辻さんご自身、中編一編のみでの単行本刊行は気が進まなかったようであるが、1500円近い価格はあんまりじゃないか? 単行本コレクター以外は、既に文庫化されている『フリークス』を買えばいいだろう。

 読後感想は、『フリークス』とは別掲載にしておこう。中編とはいえ、そのインパクトは長編に劣らない。

 凄惨な交通事故を起こして、同乗者を死亡させてしまい、本人も瀕死の重症を負ったある患者。両足は失われ、焼け爛れてしまった顔は包帯に厚く包まれていた。この悲劇の患者が「四〇九号室」で綴った日記を織り交ぜながら、物語は進んでいく。

 中盤辺りまでは、ありがちな男女の三角関係のもつれとしか思えない。しかし、綾辻作品がそのまま終わってしまうはずがないのだ。真相に至り、読者は驚愕するだろう。あまりにも残酷な事実に、言葉を失うだろう。本作について、多くを語るのは野暮というものだ。読んでみてくれ。ただその一言に尽きる。

 綾辻さんは本格の書き手としても一流だが、本作のようなサイコサスペンス調の作品を書いてもやはり一流だ。今度は長編で、本作のような作品を書いてほしい。



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