綾辻行人 18


アヤツジ・ユキト 1987-1995


2000/10/06

 あらかじめ断っておこう。本作は、綾辻ファンには嬉しい贈り物である。必読の書と言っても過言ではない。しかし、綾辻作品を未読の方には何の価値もないだろう。

 本作は分類上はエッセイ集になるのだろうが、ただのエッセイ集ではない。本作は、綾辻さんが発表した小説以外の文章をすべて収録している。エッセイはもちろんのこと、他の作家の作品への推薦文、舞台化に寄せた言葉、ドラマ化に関するエピソード、インタビュー、さらに豊富な写真の数々…。盛り沢山の内容である。このような本が企画されるところに、綾辻行人という作家の人柄がうかがえる。同じコンセプトの本を、僕は他に知らない。

 綾辻さんの作品には必ず「あとがき」があり、ノベルス化、文庫化されれば新たなあとがきが書かれる。本作においても然りである。本作の「まえがき」によれば、綾辻さんご自身は既刊作品に収録済みのあとがきを本作に収録するのは抵抗があったそうだが、文庫で綾辻作品を知ったファンにとっては、親本のあとがきまでまとめて読めるのは、何とも嬉しいことじゃないか。初版の「著者のことば」も、漏らさず収録されている。

 各年のまとめである「一九××年を振り返る」をわざわざ書き下ろしているところが綾辻さんらしい。さらに、詳細な脚注が随所に施されていることに驚かされる。こりゃ書き下ろし作品と同じくらい、否、それ以上の手間がかかったんじゃないか?

 綾辻さんの作品を何作か読んでみて、綾辻さんという人物に興味を持ったとき、初めて手にするべき作品である。でも、ファンにとっての最高の贈り物はやっぱり小説の新刊だよね。『暗黒館の殺人』の連載は順調に進んでいるようだし、このまますんなりと刊行されてほしいな。

 しかし…なぜ『霧越邸殺人事件』の舞台が温泉旅館になるんじゃい! 日本テレビのアホ。



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