綾辻行人 26 | ||
Another |
書店に行くと、綾辻行人さんの新刊は辞書並みの厚さだった。……。どうせ買うのだが、一瞬うーむと考え込んだ。一週間勝負を覚悟してレジに持っていく。
「野生時代」での連載期間は約3年に及んだ。『暗黒館の殺人』と比較すればはるかに短いとはいえ、1000枚は十分に大作だろう。振り返れば、『暗黒館の殺人』は2500枚という長さが必要不可欠だったのか疑問が残ったが、本作はどうなのか。
生まれてすぐに母が亡くなった榊原恒一は、大学教授の父が海外に長期滞在する間、夜見山市にある母の実家に預けられ、中学卒業までの1年間を夜見山北中学校で過ごすことになった。ところが、転入した3年3組は、奇妙な雰囲気に包まれていた…。
舞台は学校。鍵を握るのは謎めいた眼帯の少女、見崎鳴。相次ぐ犠牲者。学園ホラーのお約束的設定だけに、自信がなければ書けないだろう。事実、『Another』は僕の新たな代表作になるだろう、と綾辻さんご自身が述べている。
肺の病が癒えて、5月の連休明けにようやく登校した恒一。その直後から、クラスメイトが、あるいはその家族が、次々と犠牲になっていく。クラス中が疑心暗鬼に陥っていく描写は、掴みとしては完璧だ。26年前のある出来事以降、呪われた3年3組で代々受け継がれてきたルールの内容が明らかになるところで、ようやく前半は終わる。……。ふう。
そして後半。ルールが明らかになったところで、さてどうする。惨劇は続く。いきなりそんな死に方ですか…。始まってしまった〈災厄〉を止める手があるのか。後半は謎の要素が強くなっていくのが特徴である。苦肉の策で夏合宿をするのは、飛んで火に入る夏の虫ではないか? 案の定しっちゃかめっちゃかに。そして衝撃の結末が……。
ホラーとして読み始め、読み終わってみたら本格風味。という、実に綾辻さんらしい作品ではあるのだが…気持のいい騙され方じゃないんだよなあ。この世界のルール上は確かに「あり」なんだろうけど。もう少しコンパクトだったらねえ。
とはいえ、久しぶりに情熱を感じる作品ではあった。この長さで最後まで読者のテンションを維持するのは、さすがだと言っておきたい。