綾辻行人 29 | ||
Another |
エピソードS |
大作『Another』の続編として鳴り物入りで刊行された本作だが、続編だという先入観で読み始めると、拍子抜けするかもしれない。
謎めいた眼帯の少女、見崎鳴が語った、一夏の経験。海辺の町に建つ洋館で、彼女は幽霊と出会った。「彼」には、死の前後の記憶がないという。こうして「出る」理由は、自らの死体が見つからないせいと考えた「彼」は、鳴とともに死体を捜索するが…。
確かに前作の内容とリンクする部分もあるものの、実質的には外伝的内容である。物語としては独立しており、前作を読んでいなくても支障は少ないだろう。前作のボリュームと比較すればかなり短い。遅読の僕でもすぐ読み終えた。
それにしても、準主役が幽霊とは…。幽霊や死体が探偵役というミステリーは例があるが、本作はホラーであると口を酸っぱくして訴えたい。ミステリー的な読み方ができなくはない。現に僕自身がそういう読み方をした。しかし、それは得策ではなかった。
なぜなら、真相だけに着目すれば、予想を大きく裏切るものではないからである。何となくそんなことじゃないかとは思っていたが…。基本的にミステリー読みの僕に、「続編」という先入観が追い討ちをかけた。どうしても「本編」よりは地味なのだから。
本作の何を最も評価すべきか。僕が思うに、熟練した語り口である。というより、怪談やホラーの評価の大部分は、語り口で決まるのではないか。かつてのような過剰な描写と比較すれば、淡々としすぎな感もあるが、だからこそあのシーンが際立つ。
それ以外では…やっぱり見崎鳴というキャラクターに萌えるかどうかが分かれ目だろうか。正直、本作に鳴が登場しなければならない必然性は感じられない。メディアミックスや販売戦略の都合上、続編扱いにしたのではないかと勘繰ってしまう。
あとがきによれば、このシリーズにはさらなる続編の構想もあるという。いつになるのかわからないが、とりあえず続編を待つかな。