綾辻行人 参考1

綾辻行人

ミステリ作家徹底解剖

2002/10/07

 今年は綾辻行人さんのデビュー15周年に当たる。待望の新刊が刊行されることもあり、本書は企画されたらしい。

 デビュー10年目の1996年にも、『アヤツジ・ユキト 1987-1995』という小説外の本が刊行されたが、インタビュー一つを除いて綾辻さんご自身の文章のみで構成されていた。一方で本書は、著作紹介、評論、寄稿など第三者によって書かれた文章が中心となっている。その他、対談やインタビューなどが収録されているが、綾辻さんの著作とは言い難い。しかし、ご自身の完全監修とのことなので読んでみることにした。

 全体的に、全作読んでいるファンには特に目新しい内容はないが、これから読むファン向けのガイドブックとしては格好の一冊だろう。新たなファン層を開拓する意図があるかどうかはわからないが、実際に綾辻作品には若いファンも多いと聞く。開拓の余地はあるだろう。対談しているV6岡田准一のファンが目に留めたら儲けもの。

 ただし、評論だけは核心に触れていないとはいえネタばれ気味でいただけない。かといって、従来からのファンが読んでも今さら言わずもがなである。致し方ない面もあるとは思う。デビュー当時と違い、既に作家綾辻行人の評価は確立されているのだから。

 綾辻さんが原作を書き下ろした児島都さんの漫画は面白い。文章ならではのトリックを得意とする綾辻さんだが、これはさしずめ漫画ならではのオチか。敬愛する楳図かずお氏を彷彿とさせる(というよりそのもの)、クラシックな画風が味わい深い。

 そもそも、この手の本は数が見込めるものではない。それでも本書は企画された。各界から原稿が集まった。綾辻行人という人物がいかに人間として愛されているか、いかに作家として出版界の期待を集めているか。本書はその証明だと言える。

 洋の東西を問わず、過去の偉人を知らない僕にとっては、本格というジャンルは綾辻行人を中心に回っている。これからもずっと。



綾辻行人著作リストに戻る