畠中 恵 25 | ||
さくら聖・咲く |
佐倉聖の事件簿2 |
畠中恵さんの数少ない現代物作品の1つ『アコギなのかリッパなのか』の続編である。個人的にはしゃばけシリーズより好きなこのシリーズ、早速手に取った。
弟を養う大学生の佐倉聖も、就職活動の時期を迎えていた。詳細は省くが、佐倉兄弟の生活は安定してきて、聖は弟を養うことだけを考えなくてもよくなっていた。とにかく経済優先、普通に就職することを望んでいた聖は、ふと思う。自分は何がしたいのか?
相変わらず大堂の事務所『アキラ』には顔を出す。大堂を始め、衆院議員の加納ら『風神雷神会』のメンバーは、うちの事務所に来いとか好き勝手に聖の進路を話し合うが、聖は就職を機に『アキラ』を辞め、政治の世界からは離れるつもりだった。
就職活動に当たり、聖が慎重に慎重を期していたのが、大堂と親しい関係であることを隠すこと。もし相手企業に知られれば、大堂との顔繋ぎのみを期待して聖を採用することは目に見えている。大堂の影響力は未だ絶大。聖はコネで入社するのは嫌だった。
ところが聖の願いも空しく、思うように就職活動ができないのはお約束。なぜか素性がばれたり、就職試験の真っ最中にも泣きつかれたり…。『風神雷神会』は聖を支援しているのか邪魔しているのかよくわからない。怪しい人間も出入りするし…。
業種は問わないし、決して選り好みもしていない聖だが、いざ内定という段になると踏ん切りがつかず、結局『アキラ』の仕事を優先してしまう聖。しかし、事件そのものは、前作と比較して小粒なんだよなあ。読んでいてだんだん首をかしげざるを得なくなる。
結末には特に言うことがない。全体的には残念ながら期待外れだった。決して政治の表舞台には出ない聖のポジションが、前作ではうまく生きていたが、本作では中途半端さの原因になっている。就職活動と政治活動、どちらを描きたかったのか?