東川篤哉 07 | ||
殺意は必ず三度ある |
鯉ケ窪学園探偵部シリーズの第2作である。品切れ状態だった本作だが、『謎解きはディナーのあとで』の大ヒットによる東川篤哉ブームに便乗するように重版された。わざわざ新しい帯まで用意して。僕は見かけた時点でとりあえず確保しておいた。
ようやく読んでみたのだが、これが実に面白い。現時点で東川作品のNo.1に挙げてもいいくらいである。オーソドックスかつ入り組んだ構成を、外し気味のユーモアで包み隠しているのは他の作品と同様だが、どうですかこの発想の飛躍。
鯉ケ窪学園の野球部は、いつも初戦敗退の弱小チーム。ある日、グラウンドからベースだけが盗まれた。弱小チームの妨害など考えにくい。謎が解けないまま、飛龍館高校との練習試合を迎えるが、会場の飛龍館球場に鯉ケ窪学園の野口監督は現れない。
それもそのはず、野口監督は球場のバックスクリーンで死体で発見されたのだった。死体の傍らには、何かを暗示するようにホームベースとキャッチャーミットとボールが。鯉ケ窪学園から盗まれたベースの1つらしい。これはまるで…。
あのお約束の可能性について、真剣に議論を交わす鯉ケ窪学園探偵部。一方、容疑者は絞れない。死亡推定時刻近くの夜、球場には関係者が一同に会していた。偶然にしては出来すぎだが、証言によれば誰にもチャンスはないはず…。
探偵部のメンバーが大きな勘違いをしていたことが判明するのが第1の驚き。えぇぇぇぇぇーっ。まあ、そう思うのも無理はない。僕も引っかかったし。そして何より、第2の驚き。不可能を可能にするアクロバティックなトリックを、しかと見よっ!!!!
ここまで気持ちいいくらい馬鹿馬鹿しく、気持ちいいくらい一目瞭然なのは久しぶり。本当にうまくいくのかとかフェアかどうかなんて些細な問題だ。このトリックは笑えるだけでなく、ちゃんと伏線を説明していることにも触れておきたい。
バカミスっぽさと緻密さを兼ね備えた傑作。今のうちにゲットしたい。