東川篤哉 17 | ||
私の嫌いな探偵 |
烏賊川市シリーズの新刊は、『はやく名探偵になりたい』に続き短編集である。アンフェアさが目立った前作だが、本作もまたアンフェア。というより、奇をてらった作品が多い。それを笑い流せるかどうかで、評価が分かれるだろう。
「死に至る全力疾走の謎」。僕は自殺を考えたことはないが、どんな手段を選ぶにしろ苦痛は避けられず、僕には絶対できない。ましてやこんな手段など…。不自然なシチュエーションの説明もまた、不自然だった。よくその程度で済んだな…。
「探偵が撮ってしまった画」。浮気調査をしていた鵜飼が撮影した写真に、直接関係ない事件の真相が隠されていたっ!!! 見事に繋がってなるほどぉー…って、読者にはその写真が見られないんだから、わかるかそんなもんっ!!!!!
本作の一押し、「烏賊神家の一族の殺人」。由緒怪しき烏賊神神社で、罰当たりにも殺人事件が発生。烏賊に関するその豆知識は知らなかった。しかし、そのダイイングメッセージは難しすぎるだろっ!!!!! なお、謎を解くのは鵜飼ではありません。
本作の一押しにしようかどうか迷った「死者は溜め息を漏らさない」。崖下で発見された死体。彼が自殺する理由が思い当たらない。鵜飼が語ったのは、幻想的な光景に似合わない、何じゃそりゃという真相だった…。無理。苦手ではない僕にも無理。
「二〇四号室は燃えているか?」。トリックに脱力。このシリーズじゃなければ、本を壁に投げつけていたぞっ!!!!! 心情や動機を考えると切ないのだが、トリックでシリアスさを台無しにした、このシリーズらしいといえばらしい1編。
前作との違いを挙げるとすれば、鵜飼のパートナーが流平ではなく大家の朱美であることか。流平も登場するが、今回はチョイ役扱いである。前作同様、割り切って読めばそれなりに楽しめるだろう。ガチな本格をご所望ならお薦めできません。
このシリーズの長編はガチな本格なのだ。ユーモア路線をやめろとは言わないから、次回はガチでお願いしたい。それにしても、朱美は鵜飼のことを憎からず思っているのではないか。『私の嫌いな探偵』というタイトルは朱美の照れ隠しかな。