東野圭吾 03 | ||
白馬山荘殺人事件 |
学園ミステリー(この言い方には違和感があるが…)が二作続いた後に書かれた本作は、東野作品の中でも最もオーソドックスな本格ミステリーだろう。舞台は人里離れた山荘。密室トリック。そして暗号。本格を盛り上げる趣向が満載である。特に、暗号に対する注力ぶりが半端ではない。
女子大生の菜穂子は、親友の真琴と信州は白馬のペンション「まざあぐうす」を訪れた。菜穂子の兄は、一年前の冬、「マリア様はいつ帰るのか」という言葉を残し、このペンションで客死していた。宿泊客たちは、奇しくも一年前と同じ。各部屋には、マザーグーズの歌が飾られていた。
このマザーグースの歌に秘められた謎が、本作のメインである。言い切ってしまおう。マザーグースの暗号と比べれば、密室殺人はおまけみたいなものである。だが、しかし…。
あのう…東野さん。これってよっぽどマザーグースに精通していないと解けないんじゃないですか? 日本人でこれほど精通している人物を挙げるとすれば、マザーグース関連の引用文献の著者と、「キッド・ピストルズ」シリーズの作者である山口雅也さんくらいではないだろうか。
実際、菜穂子と真琴は手掛かりを得るため、わざわざマザーグースの本を買いに出かけている。しかも、重要な鍵がその本の解説に書かれていたりして。さらに、〇〇〇民謡の知識まで動員して、ようやく暗号の真の意味が明らかになる。ここまでひねりすぎると、うーむ…。そもそも、自力で解こうなんてつもりはまったくなかったんだけど。
ちなみに、菜穂子と真琴が参考にしたのは、『マザー・グース』1〜4(平野敬一監修、谷川俊太郎訳:講談社文庫)らしい。我こそはと思う方がもしいたら、チャレンジしてみては。