東野圭吾 07 | ||
香子の夢 |
コンパニオン殺人事件 |
にわかにビートルズが脚光を浴びている今日この頃。さいたまスーパーアリーナ内にジョン・レノン・ミュージアムがオープンしたり、ジョン・レノンの名作がミレニアム・エディションとして再発されたり、"THE BEATLES ANTHOLOGY"が刊行されたり。
と、いきなり話が逸れたが、『依頼人の娘』に次ぐマイナー作品である。文庫版は『ウインクで乾杯』に改題されている。ただし、こちらはまだ読みどころがある。ビートルズファンならもう少し楽しみが増す趣向も凝らされている。
パーティー・コンパニオン小田香子の同僚が、仕事先のホテルの客室で、毒入りビールを飲んで死んでいた。現場は密室状態。さらに親友の由加利が自室で殺害され、香子にも魔の手が…。
事件の鍵を握っていたのは、ビートルズのテープだった。それにしても…よくぞこんな仕掛けを施したものである。事件の真相よりも、こちらの方がよっぽど驚きに値する。本格ミステリーはそれなりに色々読んだが、ある意味でこれほど手間暇かけた仕掛けはないだろう。
良く練られているし、真犯人像も興味深いが、全体としては無難にまとまっているかな。東野さん自身が親本の著者のことばに書いている通り、コーヒーブレイクのつもりで気楽に読める作品ではある。
なお、つい最近、ビートルズが全米・全英でナンバーワンを獲得した曲のみを収録したコンピレーション盤"THE BEATLES 1"が発売された。本作の謎を解く鍵になった曲"Paperback Writer"も収録されている。美味しいところばかりを凝縮した、お薦めの一枚だ。本作の方は…あまり積極的には薦めない。