東野圭吾 08 | ||
浪花少年探偵団 |
僕の母校である東北大は、関西出身者が比較的多かったので、友人や後輩には関西人が結構いた。言うまでもないが、関西弁は波及力が強い。彼らと付き合っていると、ついつい「それはちゃうやろ」などと口の端に上ってしまったものだ。ある日、関西出身の研究室の後輩に、こんなことを言われた記憶がある。
「今野さん、字面だけ見ると完璧な関西弁ですけど、イントネーションが微妙にちゃいますね」
別に完璧な関西弁使いを目指しているわけではないのだが、この台詞には結構ショックを受けたのだった…。
さて、前置きが長くなったが本作である。ご存知の通り、東野さんは大阪の出身である。本作は大阪を舞台にした連作短編集で、台詞の大部分は関西弁で書かれている。なるほど、ネイティブスピーカーの関西弁は、文章になっても瑞々しく感じられるから不思議なものである。やはり僕は似非関西人だったのだ。
生きた関西弁は本作の魅力の一つだが、キャラクターの魅力も見逃せない。主人公であるちょっと喧嘩っ早いしのぶセンセと、彼女を慕う生徒たちが、協力し合って事件を解決していく。さらに、しのぶセンセに思いを寄せる男たちが絡んできて、賑やかなことこの上ない。最後は、なかなかにほろりとさせられる。
「ゆとりの教育」などと盛んに叫ばれている昨今だが、円周率を約3にする以前にすべきことがあるはずだ。本作には、そのヒントが隠されているのではないだろうか。
本作を気に入った方は、続編『浪花少年探偵団2』も是非読んでほしい。