東野圭吾 25


浪花少年探偵団2


2000/05/17

 前作『浪花少年探偵団』に続き、しのぶセンセが再登場である。文庫版は『しのぶセンセにさよなら―浪花少年探偵団・独立編』と改題されている。

 愛すべき悪ガキたちを無事送り出したしのぶセンセは、教育についてさらに勉強するため、兵庫の大学に内地留学していた。本作は、しのぶセンセが内地留学してから、教員として復帰するまでに起きた事件を描いている。

 中学生になったかつての教え子たちが、なぜか登場する。僕自身は、進学してかつての恩師を懐かしんだことはほとんどない。ましてや、会いたいと思ったことはない。それほど、しのぶセンセは慕われていたということだろう。

 内地留学中でも、しのぶセンセのパワフルさは変わらない。前作のファンには、それが何よりも嬉しい。今回も笑いあり、涙ありと見所は多いが、前作と比較すると悪ガキたちの活躍ぶりが目に付く。前作では、『浪花少年探偵団』と銘打ちながら、事件解決の主導権を握っていたのはあくまでしのぶセンセだったのだ。彼らの友情もまた、何も変わっていない。

 僕はよく電車の中で本を読むのだが、本作を読んでいたところ、「しのぶセンセは暴走族」の中の鉄平と郁夫の会話のシーン(文庫版p116〜p117)がもろにツボにはまってしまった。必死で笑いを堪えたつもりだったが、回りの乗客はさぞかし変な奴だと思ったに違いない。それは堪忍や、東野センセ。

 しのぶセンセが現場復帰する「しのぶセンセの復活」は、シリーズのラストを飾るに相応しい好編だ。復帰早々、しのぶセンセは難しい問題に直面する。しかし、しのぶセンセは体当たりで問題に取り組む。その熱意は、やがて生徒たちにも伝わる。

 このシリーズは本作で終わりだが、つくづく残念である。



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