東野圭吾 23


同級生


2000/06/28

 東野さんは、教師嫌いを公言している。そのことがプラスに作用すると、『浪花少年探偵団』シリーズのような魅力的な作品が生まれる。しかし、本作は逆にマイナスに作用してしまった作品ではないだろうか。うがった見方だろうとは承知しているが、本作は東野作品の中でもどうしても好きになれない一作だ。

 野球部に所属する、西原荘一。彼は、マネージャーの宮前由紀子と関係を持った。そして…由紀子は荘一の子を身ごもったまま、事故死した。彼の愛を本物だと信じたまま。荘一にできるのは、由紀子との関係は本気だったと告白すること、そして事故の真相を明らかにすることだけだった。

 予め断っておくと、僕はこの手の話は大の苦手である。文庫版裏表紙の紹介文を読んだ時点で、既に引いていた。そして読んでみたら…案の定であった。

 事故に絡んでいたのは教師だった。完全に「教師=悪役」の構図が出来上がっている。確かに、教師に非がなかったとは言わない。しかし、それ以前に荘一の軽率な行為こそ責められるべきではないか? 若気の至りでは済まされない。

 僕自身、学校も教師も好きだったと言えば嘘になる。しかし、今にして考えてみれば、教師とは苦労の割に報われない職業だと思うし、感謝していることだって少なくない。終始憎々しげに描写され、なおかつ由紀子を死に追いやった張本人扱いされる灰藤、御崎両教諭が、何だか哀れでならない。

 それに何より…これではあまりにも由紀子が浮かばれないんじゃないか? 西原家の家庭事情がどうあれ、荘一の行為はやはり僕には許容しがたい。

 決して償えない過ちを犯した荘一は、これから何を考えて生きていくのか…。



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