東野圭吾 24


分身


2001/01/21

 『変身』と似たタイトルだが、まったく別の物語である。しかし、共通点もある。両者に描かれているのは、医学の負の領域。そして、共に展開でぐいぐいと引っ張る作品だ。

 札幌の大学に通う、氏家鞠子18歳。東京の大学に通う、小林双葉20歳。「鞠子の章」と「双葉の章」が交互に描かれながら、物語は進む。二人の背後に迫る影。二人を結ぶ糸とは、一体何なのか?

 小説としての出来は別として、想像の域を出ない『変身』と比較すると、本作は格段にリアリティがある。二人の関係は早い段階で読めるだろう。タイトルからしてそのまんまなのだから。今のところ、人間で行った例を少なくとも僕は知らないが、『変身』における脳移植とは違い、技術的には十分に可能なのではないか。

 二人はそれぞれに隠された過去を追う。そんな二人に魔の手を伸ばす、医師とは名ばかりの人間たちに、大いに怒りが募る。相次ぐ医療ミスにより医師への信頼度が地に落ちている今、本作を読んだら胸がむかつくだろう。記者会見で居直る医師たちに、本作の医師たちがだぶるだろう。誠意のかけらもない、特権意識の塊。

 ネタはさっさと割れている。ラストシーンも自ずと予想がつく。にも関わらず、唸らされた。この飽きさせない展開は、ラストシーンの絶妙さはどうだ。こういううますぎるところが引っかかるという人もいるんだろうけど、誰が何と言おうと本作は面白い。

 二人はそれぞれの人生を生きてきた。それはこれからも変わらない。変わってはならない。二人が悲しみを乗り越え、新たな「鞠子の章」、「双葉の章」を築いていくことを、願わずにはいられない。

 なお、本作は集英社の「小説すばる」誌上では『ドッペルゲンガー症候群』というタイトルで連載されていたが、単行本化の際に『分身』と改題された。改題して正解だろう。



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