平山夢明 10


暗くて静かでロックな娘


2012/12/21

 今年も年の瀬に平山夢明さんの新刊が届いた。問題作『他人事』以来の集英社からの新刊ということで、『他人事』のような理不尽さを期待していたのだが…。

 「日本人じゃねえなら」。やたらと「日本人じゃねえのか」と聞かれる主人公と、幼い兄妹との交流。色々と深読みできそうだが、切ない結末…。「サブとタミエ」。彼女を寝取った奴を突き止めてみれば…ううむ、意外な展開。またしても切ない…。

 「兄弟船」。鳥羽一郎の有名な演歌とは何の関係もないが、兄弟の絆を感じるような感じないような。何となく切ない…。「悪口漫才」。あるきっかけで人生が転落した男に、またしても…。笑えるような笑えないような。さすがに切なくはないな…。

 「ドブロク焼場」。火葬場で働きつつ、夢を追う男。平山作品には珍しく前向きかと思ったら、本番で…おいおい!!!!! 切ないと言えなくもないか? 「反吐が出るよなお前だけれど……」。夫婦で罵り合うラーメン店。行きたいとも食べたいとも思わないが、愛の小説なのかな、これ…。何だかハッピーエンドだし。

 続く「人形の家」に至っては、おいおい平山流の恋愛小説じゃないか。口汚い表現は照れ隠しとしか思えないぞ。続く「チョ松と散歩」に至っては、おいおい平山流のファンタジーじゃないか。しかも心温まるじゃないか。どういうことだ。

 というわけで、全10編中の8編までは、従来の平山作品のイメージを裏切る作品が並んでいると言える。情を描くことは過去にもあったが、ここまで情に訴えたことはなかったのではないか。と、残り2編を読むまでは思っていた。

 ところが…「おばけの子」。ひどい。あまりにもひどい。ひどいとしか言いようがない。そして最後の表題作「暗くて静かでロックな娘(チャンネー)」。ひどい。あまりにもひどい。少しは残っただけ「おばけの子」よりはましなのか。そんなわけあるかっ!!!!!

 平山夢明は、最後に本性を剥き出しにした。読者を嘲笑う様子が目に浮かぶ。この人の悪さこそ平山夢明だ。素晴らしき外道をこれからも応援するぜっ!!!!!



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