伊坂幸太郎 28


首折り男のための協奏曲


2014/02/09

 帯には「贅沢すぎる連作集!」とある。「連作」という先入観が強すぎたためか、正直、読み終えて拍子抜けしたと言わざるを得ない。

 「首折り男の周辺」。疑う夫婦、間違われた男、いじめられている少年という3つの視点で交互に語られる。一応オチがあるのかな、これ…。一風変わった「濡れ衣の話」。犯行を自供し、刑事に護送されているはずの男。ところが…。意外性は認めよう。

 黒澤が久々に登場、「僕の舟」。酔狂に付き合う黒澤という男が、人に興味があるのかないのかわからない。死神の「千葉」に似ているかもしれない。引き続き黒澤編「人間らしく」。しかし、主役はクワガタの飼育を趣味にする男のような…。

 「月曜日から逃げろ」。逃げたいよそりゃ。それはともかく、やっかいな男に目をつけられた黒澤。これで相手はへこむかね? 伊坂作品としては異例な「相談役の話」。真相は各自ご想像ください。笑えるような笑えないような…。なお、黒澤は脇役です。

 そして、大団円かと思って心して読み始めた「合コンの話」。……。そのまんま、3対3の合コンの話やんけっ!!! 男女の思惑と心理戦はそれなりに面白いが、他の作品との関連づけは強引で必然性がないかな。単独でも最後のオチは面白いのに。

 というわけで、いつもの伊坂節だし、それなりに楽しめたけれど、個々の作品の魅力という点でも、全編を通じた完成度という点でも、似たコンセプトを持つ『フィッシュストーリー』に劣るだろう。今読み返すと、『フィッシュストーリー』にもケチをつけているけども。

 あとがきを読むと、そもそもバラバラの依頼に応えて書かれた作品群であり、最初から連作を想定していたわけではないとのこと。並べてみたら結果的に緩い繋がりができた。これ幸いとばかりに「連作」を前面に出した新潮社は、強かではある。

 どうせなら、度々登場する黒澤が主役の作品集で統一してみては。あるいは「千葉」と競演とか。でも、「千葉」との競演は死を意味するからだめか。



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