海堂 尊 25 | ||
ケルベロスの肖像 |
田口・白鳥シリーズ第6作。帯によれば、「バチスタ」シリーズ、ついに完結! だそうだが。既に収拾がつかない桜宮サーガ、本編だけでもまとまるのだろうか?
東城大医学部Aiセンターの稼動が迫る中、高階院長宛に「八の月、東城大とケルベロスの塔を破壊する」という脅迫状が届いた。白鳥に派遣された姫宮曰く、過去の事件が関係しているらしい。やっかいな案件を抱えるはめになった田口センター長…。
『アリアドネの弾丸』の件が何事もなかったように準備が進んでいるが、海堂ファンたるものいちいち突っ込むべからず。Aiセンター設立に当たり、マサチューセッツ医科大学からノーベル賞に近いと言われる東堂上席教授を招聘。しかし、それだけではない。東堂は、自衛隊の全面協力により、超目玉を日本に持ち込もうとしていた。
一連のセレモニーで、人生最大の晴れ舞台に臨む田口。自衛隊ってここまでサービスしてくれるのか? 海堂ファンたるもの、この程度の演出は笑って受け流すべし。今回、白鳥はあまり表立って動かない。名実ともに、田口が主役の作品と言えるだろう。脇役陣に食われるのに変わりはないが…。完結編らしく、懐かしい顔が勢揃い。
一部に抵抗勢力がいるものの、さほど揉めることなく着々と準備が進んでいる印象を受ける。だが、それがむしろ不気味。このまま終わるわけがない。そしてAiセンター設立を記念したシンポジウムの当日…わははははは、やっぱり起きましたよ。もはや医療問題はどこへやら。海堂先生、最後に派手にぶちかましてくれましたね。
本作に至る背景は、シリーズ本編はもちろん、桜宮サーガのほぼ全作を読了していないと理解できないだろう。逆に、全作を読了していれば、予見できた結末かもしれない。ここまでやるとは僕も思っていなかったけども。海堂作品を彩った多くの曲者と敵役たち。その誰よりも、大ボスは手強かったわけである。動機の面はいただけないが。
白鳥のある部下の活躍(?)により、かすかな希望の芽が残された…と思っていいのかね。田口に重責がのしかかるが、満更でもなさそうだ。しかし、これではいかにも続きを臭わせるし、本編以外のあれやこれやは片付いていない。桜宮サーガは当分続きそうである。何だかんだで今後も付き合っちゃうんだろうなあ、きっと。