金城一紀 08 | ||
レヴォリューションNo.0 |
ザ・ゾンビーズ・シリーズの完結編だそうである。シリーズ前作『SPEED』からは実に5年半が経過している。小説の新刊としても3年半ぶり。とにかく速攻で手に取ったが…。
本文150pくらいしかなく、長編と呼ぶには短すぎる。こんなに読者を待たせておいて、薄すぎないか? 中身は濃密なのだろう、きっと。淡い期待にかけて読み始めた。
時間はザ・ゾンビーズの結成前にさかのぼる。停学明けで1週間ぶりに登校したお馴染みの面々。彼らがオチコボレ校に入学した年、学校側は定員より200名も多い新入生を入学させていた。その裏に隠された陰謀を、まだ彼らは知らない。
停学明けの「僕」らを待っていたのは、「第一学年団体訓練開催のお知らせ」だった。そういえば中学の時には青年の家で合宿とかあったものだが、この団体訓練というのが、しごきなどという言葉では生ぬるい内容であった。虐待だこりゃ。
連日無理な目標時間での登山を課し、遅れれば容赦なく殴る蹴る…。ほうほうの体で戻ってくれば、ろくに休憩もなく次のメニュー。暴力教師猿島など、本気で戦えば舜臣の敵ではないだろうが、やり返せば退学必至。彼らには抗う術がない。
そして後のザ・ゾンビーズは、初めての冒険を決意するのだが…。正直予想の範囲内であり、特にハラハラドキドキもしない。猿島の鬼畜の所業を見るにつけ、応援したい気持ちはそれなりに湧いてはくるものの、あまりにも訴えるものがない。
名前が明かされない「僕」と、父親との微妙な関係。元々は優等生だったらしい「僕」が、なぜオチコボレ校に入ったのか。その辺をつっこんでくれれば、まだ読みどころがあったのに。父の申し出には、正直心が揺らいだだろう。彼なりの意地なのか。
なぜか訓練を免除されているアギーこと佐藤健。彼は今回の件で裏から手を回していたのだが…彼を見ていると、要領よく生きた奴の勝ちという感じがするよなあ。何はともあれ、シリーズ完結編としては寂しい出来だ。さよならザ・ゾンビーズ。