加納朋子 12


レインレイン・ボウ


2003/11/30

 『月曜日の水玉模様』の続編と聞いていたが、実質はまったく別の作品集と考えていい。そして、前作も決してつまらなくはないが本作の方がずっと優れている。連作短編集の名手、加納朋子さん面目躍如の一作だ。

 チームメイトのチーズこと牧知寿子の葬儀をきっかけに、かつてのソフトボール部のメンバーが久しぶりに顔を合わせた。しかし、キャプテンだった陶子に悲報を伝えてきた当人の里穂は、葬儀に現れなかった…。

 陶子を主人公に据えていた前作は、全7編のタイトルに曜日が入っていたが、今回は虹の七色が入っている。陶子はあくまで一登場人物。チーズ(と敢えて書こう)の死というエピソードに絡めつつ、それぞれの道を歩むチームメイトの現在を描くという趣向である。

 正直、前作をあまり買っていなかったのだが、本作の伏線だと考えれば納得できる。何やら事情を抱えているらしい陶子に近寄り難いものを感じていたのだが、その点を含め、すべての謎は最後の一編「青い空と小鳥」を読めば氷解する。

 大変月並みな言い方だが、やはり等身大の人物を描いているところが素晴らしい。仕事に、家事に打ち込みつつ、どこか肩肘張って、だけど真っ直ぐに生きている。それぞれの青春を送った社会人には考えさせられるところ大だろう。

 そして、かつての仲間とはいえ決して一枚岩ではない。苦手な相手の一人もいる。年齢を重ねる毎に、年賀状を交わす程度の付き合いになっていく。誰でも今を生きているのだから。僕自身、既にかつての同級生との付き合いより会社生活の方が長い。

 それでも、かつての仲間は大切だ。今年、偶然中学と高校の同窓会があった僕は、本作を読み終えて改めて思ったのだった。

 とはいえ、忘れてはいけないのは本作はミステリーだということだ。各編に織り込まれた謎。最後に明らかになる謎。あまり女性作家の作品を読まない僕が加納作品を読むのは、あくまでミステリーであるからだと思う。と言いつつ、全作は読んでいないし…。



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