加納朋子 06


月曜日の水玉模様


2001/10/28

 軽妙なタッチで気楽に読める作品集である。加納さんらしさが出ているとは思うが…うーん、傑作と呼べるほどではないかなあ。

 丸の内に勤めるOL(もう死語か)片桐陶子が、通勤電車の中でリサーチ会社調査員の萩と知り合う。二人の身近に起こる、不思議な事件の数々。「月曜日の水玉模様」に始まり、「日曜日の雨天決行」に終わる全7編は、タイトルにすべて曜日が入る。

 「一週間」という歌があったな。歌詞は忘れたが、大多数の日本の勤め人がそうであるように、月曜日に会社に行って〜火曜日に会社に行って〜以下略…というのが僕の一週間だ。陶子と萩にしてもそれは同じ。通勤ラッシュに揉まれる毎日。二人が利用する小田急線の凄まじさは特に有名で、利用者の方は共感できることだろう。

 各編については触れないが、読み進むにつれて陶子や萩たち登場人物の複雑な事情が徐々に明かされる。しかし、突っ込んで描写されることはなく淡々と進むので、『ななつのこ』や『魔法飛行』と比べるとどうしても薄っぺらな印象を受ける。

 敢えて「普通」に徹したという見方もできないことはない。陶子や萩ほどではないにしろ、誰でも何かしらの事情を抱えているはずだ。繰り返しの毎日の中にも、ちょっとした変化が転がっているのだろう。僕がそれを見落としているだけなんだ、きっと。そこに加納さんの狙いがあったのかもしれない。

 とはいえ、全7編に描かれる事件はまずお目にかからないものばかり。ちょっとした変化とは言えないよなあ。オールスターキャストとも言うべき「日曜日の雨天決行」には苦笑したぞ。どうせだったら、うんあるある、と思えるくらい「普通」を追求してほしかったな。作りが中途半端なのは残念。

 電車通勤のお供には最適かもね。読んで損はない。



加納朋子著作リストに戻る