古処誠二 02 | ||
少年たちの密室 |
古処誠二さんの待望の新刊である。デビュー作『UNKNOWN』はやや変化球的な作品だったが、今回は直球勝負というところか。断言しよう。本作は犯人、殺害方法、殺害動機という本格ミステリーの三大要素が完璧に満たされている。しかし、本格ミステリーという枠に留まらない傑作だ。
東海大地震が発生し、たまたまマンションの地下駐車場にいた6人の高校生と担任教師が閉じ込められる。暗闇の中で、一人の少年が瓦礫で頭を割られて死亡した。これは事故か、殺人か? 殺人だとすれば、まったくの暗闇の中、一撃で殺すことがなぜできたのか?
極限状態の中で展開される、息詰まるドラマにまず圧倒される。殺害されたのが問題児だけに、動機は誰にでもある。疑心暗鬼に捕われる生徒たちと教師。問題児だから殺していいなどとは言わないが、千載一遇のチャンスを得たとしたら、どうだろう? 薄っぺらな綺麗事など持ち出す気にはなれない。
地下駐車場での事件は、回想シーンとして語られる。この事件だけでも十分に作品として通用するところだが、さらに驚くべき真相が用意されている。計算高さと気弱さが同居した黒幕の人物。最後まで保身を捨てない姿勢。その唾棄すべき姿勢は、法廷でも変わらないに違いない。
本作の大きなテーマとして、学校問題が挙げられるだろう。臭いものには蓋をしろ、というお役所と何ら変わらない学校の体質。いじめという認識はなかった。そんな学校長の記者会見を何度テレビで見たことか。こうしたテーマはしばしば小説のモチーフとして用いられるが、多くの場合はただネタでしかない。どうせ書くならここまで鋭く踏み込んでみろよ、と言いたい。
前作とはがらっと変わり、悲しい物語である。あまりにも理不尽な、この世の中。しかし、前作以上に力強い物語でもある。これはすげえよ、本当に。
ところで、名古屋の道路が広い意味を、あなたは考えたことがありますか?