今野 敏 A-15

烈日

東京湾臨海署安積班

2013/08/31

 大いに戸惑った前作『夕暴雨』から一転、再び正統的な警察小説に戻った。本作では、安積班に新たなメンバーが加わる。

 新たなメンバーは、女性刑事の水野真帆。実は、ドラマ『ハンチョウ〜神南署安積班〜』のオリジナルキャラクターだったのだが、原作に逆輸入された。水野は初任課で須田と同期だったという。ドラマでは黒谷友香が演じた水野刑事は、やはり美人という設定で、安積班の面々も最初はどう接するべきか戸惑う。

 「新顔」。水野が安積班と初めて顔を合わせたのは、水死体が上げられた埠頭だった…。須田と水野の関係に注目。「海南風」。捜査本部が設置され、水野と組むことになった安積。ドラマではいつも組んでいたが、まだぎこちない。今回も須田が…。

 「開花予想」。出入りの新聞記者・山口友紀子の視点で描かれる異色編。彼女もまた、男社会で肩肘張って生きている。「烈日」。黒木と桜井がまさか病欠。そんな中、自殺と処理されかけた現場の異変に、水野が気づいた。

 「逃げ水」。友紀子が安積に張りつくのはいつものことだが、質問がいつもと違う? ただでさえ相楽や部下との関係に悩むのに…。「白露」。あまり目立たない安積班の最年少・桜井。捜査本部で本庁のベテラン刑事と組んだことが、転機となるか。

 「凩」。安積の悪友、交機隊の速水が大活躍。組織立ったかつてのマル走とは違い、少人数で歯止めが利かない現代のマル走。はるかに危険だ。最後の「厳冬」は、安積が高熱を出したことで色々と見えてきたことが興味深い。

 各編が独立して読める一方、全編を通じて、水野が安積班のメンバーとして真に受け入れられる過程を描いていることがわかるだろう。このシリーズは奇をてらう必要はない。先が見通せない現代だから、ストレートすぎるくらいストレートでいい。



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