今野 敏 PQ-06


裏切りの追跡者


2011/04/26

 『奏者水滸伝 追跡者の標的』と改題されたシリーズ第6作。前作『復讐のフェスティバル』で米国進出を果たした4人は、帰国の途に着こうとしていた。

 ところが、空港で発砲事件が発生。撃たれた男が比嘉隆晶のドラムセットに倒れかかり、台車から崩れ落ちた。4人のジャズフェスティバル出演に尽力したプロデューサー、プリス・アンダーソンのとりなしで、足止めされることなくチェックインできたのだが…。

 というわけで前作のラストから繋がっているわけだが…本作はシリーズ中最も突っ込みたい1作なのだった。最初に言ってしまおう。全部比嘉が悪い、比嘉が!!!!!

 米国進出成功でますます熱気が高まる中、ロサンゼルスから来たという中国武術の達人、陳翔(チェンシャン)が、4人の本拠地『テイクジャム』に比嘉を訪ねてくる。彼はいきなり比嘉に試合を申し込むが、比嘉はあっさりと受けてしまう。自らも空手家である比嘉は彼を好意的に迎えるのだが、他の3人は警戒感を抱いていた…。

 比嘉が陳翔を受け入れた理由は、武術家同士感じるものがあったという、ただその1点だけ。無防備にもほどがあるだろがっ!!!!! そもそも陳翔の目的は何なのか。公安部総務課特命班の赤城やFBIのアダムスンが出張ってくるのはお約束の展開である。

 こんな事態を招いても比嘉を許してやれる3人は懐が深いねえ。そして木喰。口が軽すぎてもはや高僧とは思えないぞっ!!!!! さすがに責任を痛感したらしい木喰に対し、比嘉はといえば…。それにしても、キャスターの坂口亜紀子はお気の毒。巻き込まれたというべきか自業自得というべきか。興味は音楽に留めておけばよかったのに。

 例によって決着は何だか呆気ないが、このシリーズは次の第7作で完結である。一体どうやってまとめるのだ? 『特殊防諜班』シリーズにも感じたことだが、毎回突っ込みどころ満載のこのシリーズが、なぜか愛おしい。でも、最後にもう一度言わせて。

 武術の達人で悪い奴なんて香港映画にいくらでも出てくるだろうがっ!!!!!



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