今野 敏 SJ-02


聖卍コネクション


2009/10/13

 『特殊防諜班 組織報復』と改題・復刊されたシリーズ第2作。第1作『新人類戦線 “失われた十支族”禁断の系譜』を読んでいないと経緯がわかりにくいだろう。なお、文庫版裏表紙のあらすじは前作までのネタばれになっている恐れがあるので、要注意。

 真田とザミル、そして鍵を握る少女とその祖父は、敵の撃退に成功した。しかし、新たな攻撃は始まっていた。成田空港で発生した爆破テロは、その予兆だった。

 前作以上に内容はスケールアップ。いきなり成田空港での爆破テロ。しかもこんな手口で。1987年当時でも、日本の空港のセキュリティはこんなに脆弱なのかよ。という突っ込みはさて置き、今回も単純にアクション・エンターテイメントとして楽しむべし。

 ヒトラーなどナチスの幹部が実名で出てくるのはともかく、存命しているダライ・ラマ14世の名まで出てくるのはすごい(ダライ・ラマは輪廻転生の思想により継承されるので、存命という言い方は正確ではないかもしれないが)。ある目的で来日したラマ教の僧の一団を、敵が利用しようとしていたとだけ書いておこう。色々とデリケートなチベット問題だが、このような形で取り入れるとは、大胆というか何というか…。

 前作以上にドンパチは派手。松江の住宅地で、京都の市街地で、発砲するわ爆発は起きるわ、やりたい放題である。まだ第2巻でこれなら、この先はどうなるのやら。前作以上に後始末に難儀しそうである。その辺はあまり突っ込まないのがお約束だが。

 途中経過である本作を、単独で評価するのは難しいが、伝奇物のテイストよりは戦闘シーンがメインの作品になっているように思う。生身での戦闘シーンは、武術物に限らず今野敏作品の多くに見られるが、兵器による戦闘シーンの描写にも長けているとは。

 もちろん生身による戦闘シーンもある。真田もザミルも鍛え抜かれた戦士だが、決してスーパーマンではない。ピンチにも陥るし、死への恐怖も感じる。その点も、読者の感情移入を促す要因なのだろう。まだまだ多くの謎を残したまま、次巻へと続く。



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