今野 敏 ST-02

ST 警視庁科学特捜班

毒物殺人

2009/01/25

 シリーズ第2作にして、STが解散危機? 上司の桜庭所長と三枝管理官から、何としても成果を上げ、不要論をねじ伏せろと厳命される百合根。

 シリーズ全体のプロローグ的内容で、背後に大きな力の存在を匂わせた前作『ST 警視庁科学特捜班』と比較すれば、スケールという点では小さいかもしれない。しかし、一見無関係に思える事件が絡み合い、収束していく面白さは、さすが今野敏。

 東京・新宿と世田谷で連続して発見された変死体。解剖の結果検出されたのは、一般には入手しにくい毒物だった。百合根が成果を焦る中、STのメンバーが動き出す。捜査の過程で浮かび上がる、自己啓発セミナーの存在。人気女子アナに迫る危機。

 STメンバーで今回のキーマンと言えるのは、僧籍を持つ第二化学担当・山吹。古今東西の宗教に造詣が深い山吹は言う。宗教と自己啓発というのは本来切っても切れないものだと。近年大ブームのあらゆる自己啓発本、自己啓発セミナーの類に宗教の臭いを感じてしまう僕は、山吹の言葉に我が意を得たりと思ったのである。

 ストーカーや周囲のプレッシャーに悩まされつつ、バブリーなデートを重ねるTBNの八神秋子アナ。酸いも甘いも知っているだろうに、あっさりSCアカデミーにはまるなよという気がするが、それだけ語り口が見事なのか。試してみようなんてつもりは毛頭ないが。

 SM論まで出てきた末に明らかになった事件の構図は…呆れたというか何というか。あまりも情けない個人的動機に仰け反った。でもいいじゃない。気持ちいいくらいエンターテイメントに徹している。エンターテイメントってそもそもご都合主義だし。

 長すぎず、単純に楽しめるのに、内容は練りに練っている。それがこのシリーズのいいところなのだ。警察小説のツボもしっかり押さえている。お手軽作品として高い評価は受けないかもしれないが、重厚作品ばかり読んでいたら疲れてしまうって。



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