倉知 淳 11 | ||
なぎなた |
倉知淳さんの新刊は実に5年ぶり。単行本未収録短編をまとめた作品集が2点同時刊行された。本作はそのうちの1冊、『なぎなた』である。タイトルに特に意味はないらしい。
いわゆる倒叙物。『刑事コロンボ』がわかる僕は若い読者ではありません。しかし…コロンボと比較すると、乙姫警部は陰気だし、そんな根拠で勝負に出るか??? という気がするが、倉知作品なら許せるから不思議だ。シリーズ化されるかも?
いわゆる…以下自粛。どんだけ後味が悪いのか期待して読んだら、そういうことですか。初出当時はそれなりにインパクトがあったのかもしれないが、今どき驚くことではない。根が優しい倉知さんだけに、苦笑いで済むだろう。安心して読んでください。
猫好きには堪りません。本作ミステリというより、純粋にじーんとするお話。この際解釈は大した問題ではないのである。そこに猫がいるかが問題なのである。押し付けがましくない、素直にじーんとする物語って、なかなか書けないと思う。
短編の割に登場人物がキャラ立ちしているのは、シリーズ化し損なったから。猫丸先輩シリーズに代表される倉知流本格らしい、推測というか空論だが、そんな手間をかけてもあらぬ疑いを招くだけだと思ったのは、僕だけだろうか…。
猫好きには堪りません…というか堪ったもんじゃない? こういう張り紙はよく見かけるよねえ。猫丸先輩シリーズに代表される倉知流本格らしい推測というか空論だが…うーん、そんなんで少しは満たされるわけ??? 「眠り猫、眠れ」に続く猫シリーズか。
一見奇妙なシチュエーションに、何となく納得できる解釈を与えるのが倉知流本格のお約束。今回はどう料理するかと思ったら、珍しく極めて合理的な結末でした(大変失礼)。映倫を通過しなさそうなこの映画、見たいような見たくないような…。
翻訳物調の文体がなかなか堂に入っているが、やはり謎の部分に着目したい。このような手段が成立するのは、米国ならでは。やろうと思えば誰にでもできそうな殺害手段なだけに、恐怖を感じる。翻訳物という設定をうまく利用した1編と言える。
『こめぐら』と比較すると、オーソドックスな作品が並んでいる印象を受けるが、これらの作品群が日の目を見たことを一読者として喜びたい。倉知淳さんに、東京創元社に感謝。できることなら、3年に1冊くらいは新刊をお願いします。