倉知 淳 12 | ||
こめぐら |
倉知淳さんの新刊は実に5年ぶり。単行本未収録短編をまとめた作品集が2点同時刊行された。本作はそのうちの1冊、『こめぐら』である。タイトルに特に意味はないらしい。
わははははは、タイトルがすべてを物語る。こういう嗜好の人たちがいるのは聞いたことがあるが、本格ミステリのネタにするという発想は倉知さんならでは。というか、その自慢の特注品を着けた姿、想像したくないんですけど…。
わははははは、超アンフェア。バカミスと言ってしまえばそれまでだが、このネタが許せてしまうのは倉知さんならでは。一応、アリバイ崩しものとだけ書いておきましょう。こういうのを笑い流せる心の余裕を持ちたいものである。本命(?)の方を読みたいぞ。
『なぎなた』では翻訳物を披露してくれたが、『こめぐら』では時代物を披露。しかし…時代物でこのネタってあり??? 残念ながら、まったく同じネタを使った短編を知っていた。もちろん挙げられません。あとがきはもろネタばれなので、先に読んじゃだめ。
本格ミステリじゃないのはともかく、とっても倉知さんらしくない1編。そういう点では貴重な1編かもしれない。こういうのは山口雅也さんの得意領域では? オチで読者をずっこけさせるのには成功している。というか、ポカンとしたぞ。
講談社ミステリーランドのネタにしようとしたが、自主的にボツにしたとか。是非ミステリーランドとして完成させてほしかったが、長編ネタではないか。本編も笑えたが、実際にミステリーランドどして刊行された『ほうかご探偵隊』もお薦めしたい。
2冊中唯一の猫丸先輩シリーズ。猫丸先輩自らが言うように、『日曜の夜は出たくない』に収録の「一六三人の目撃者」以来の衆人環視の毒殺ネタ。うーむ、盲点を突いているといえば突いているけれど、僕にはそんな勝負は無理。
『なぎなた』と比較すると、一発ネタ的な作品が並んでいる印象を受けるが、これらの作品群が日の目を見たことを一読者として喜びたい。倉知淳さんに、東京創元社に感謝。できることなら、3年に1冊くらいは新刊をお願いします。