京極夏彦 07


塗仏の宴 宴の支度


2000/12/16

 本作は、現在のところのシリーズ最長作品、『塗仏の宴』の前半部に当たる「支度」編である。六つの事件が収録されているが、本作だけを読んでもまったく繋がりがわからない。事件の謎は、後半部の『塗仏の宴 宴の始末』で明らかになる、という趣向である。

 本作を読み終えた時点でわかることは、関口君が災難に巻き込まれたことだけ。これまでも事件に関わってきたじゃないか、という突っ込みはさて置き…。どんな災難かは伏せておくが、京極堂たちがその事実に気付くのは「始末」編に入ってからである。

 最初の一編「ぬっぺっぽう」で、関口巽に奇妙な取材依頼が舞い込む。伊豆山中の集落が、住人ごと忽然と消え失せたという。集落の中心に位置する佐伯家には、ある秘密が隠されていた…。今から思えば、これは罠だったのだが。取材に赴いた関口の記憶は、途中でぷっつりと途切れる。最後の「おとろし」で、関口は衝撃の事実を告げられ、「支度の完了」となる。

 間の四編では胡散臭い団体のオンパレードだ。成仙道。みちの教え修身会。占い師の華仙姑処女。中国式古武術と称する気道会。長寿延命講。藍童子なる少年…。挙げていったらきりがない。何やらお互いに利害関係がありそうなことだけは察せられるが、頭がパンクしそうになった。

 京極さん曰く、「これはこれで終わり」なのだそうだが、これだけでは感想も何もないのが正直なところ。ただでさえ事件関係者の多さに四苦八苦する本シリーズだが、これまでの比ではない。ここまで大風呂敷を広げて大丈夫なのか、と心配になってきた。京極さんのことだから、「始末」編まで構想はできていたのだろうけど。

 最初と最後を除けば一話完結と言えないこともないが、読者をじらす終わり方をしてくれたものである。近日発売のはずの『塗仏の宴 宴の始末』が刊行されるまで、僕は大いにじらされることになった…。



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