京極夏彦 08 | ||
塗仏の宴 宴の始末 |
六つの事件がいかに繋がるのかが注目された、『塗仏の宴 宴の支度』に続く解決編。当初の予定から大きく遅れて本作が書店に並ぶと、僕は早速入手して貪るように読んだ。
レギュラーキャラクターから懐かしいキャラクターまで、さしずめオールスターキャストといったところ。結論から言うと、六つの事件が隙間なく繋がる展開は見事。しかし、同時に事件の真相を知って脱力してしまった。佐伯家が代々守ってきた秘密の正体。そして何より、京極堂にとって最凶の相手と言うべき、黒幕の人物。
京極堂とは対極にあるこの人物により、多くの人々が不幸に巻き込まれた。しかし、怒りを通り越して呆れてしまった。ここに、悪趣味極まれり。自身の欲求を満たすためとはいえ、ずいぶんと壮大な罠を仕掛けたものである。
京極堂自身の戦争体験が背景にあるのは、注目される。同等の能力を有しつつ、決して相容れない二人の男。トリック(と言えるのか?)も引っかかるが、平行線をたどったまま終わるのも、今ひとつ歯切れが悪い。今後、二人の再対決はあるのか?
ご存知の通り、本作以降シリーズ本編の続編は刊行されていない。既に二年以上が経過しているが、『陰摩羅鬼の瑕』は来年も刊行されないような気がする。
色々な意味で、シリーズは行き着くところまで行ってしまったと思う。いくら超多忙の京極さんとはいえ、ここまで間が空くと、ご自身もシリーズに行き詰まりを感じているのではないか、今一度見つめ直しているのではないかと勘繰りたくもなる。
タイトルまで発表した以上、『陰摩羅鬼の瑕』はいつかは刊行されるだろう。「構想はできている」のだそうだ。ならば一刻も早く形あるものにしてほしい。それがプロの作家の義務だ。さっぱり感想になっていないが、声を大にして言いたい。読者はいつまでも待ってはいない。予告はもう聞きたくない。