京極夏彦 12


どすこい(仮)


2000/05/02

 一見仮タイトルのようだが、実はこれが正式なタイトルである。「どすこいかっこかり」と読むらしい。カバーの表記は「まるかり」じゃないのかという突っ込みはさて置き…。

 本作は、「小説すばる」(集英社刊)で不定期連載されていたお笑いシリーズに、書き下ろし一編を追加して単行本化したものである。発売前から非常に気になっていた作品だったのだが、書店に並んでいるのを最初に見たときのインパクトは強烈だった。わざと狙ったとしか思えない厚さ。ご丁寧にエンボス加工を施したむさ苦しい装丁。なぜか丸いページの角…。

 収録作のタイトルが、これまたコテコテである。「パラサイト・デブ」、「すべてがでぶになる」、「土俵(リング)・でぶせん」などなど。また、単行本としては京極夏彦名義だが、各編の名義は異なる。南極夏彦だの、京極夏場所だの。で、肝心の内容だが、はっきり言って元ネタ作品には関係ない。笑えるかどうかについては…笑えないことはない。ただし、僕の場合は苦笑いに限りなく近かったが。

 残念ながら、あまりツボにはまったとは言えないのだが、京極夏彦の名で本作を堂々と刊行した意気込みには拍手を送りたい。東野圭吾さん―京極さん曰く「僕のギャグの師匠であり水先案内人」―のお笑い短編集『毒笑小説』の文庫版巻末に、両氏がお笑いについて語り合う興味深い対談が掲載されている。泣かせるより難易度が高いのにお笑いに対する評価が低い、とは両氏の弁である。

 その点については僕も同感だ。評価云々はともかく、その難易度の高さ故に、お笑いに取り組む作家は皆無に等しいのだろう。今後もこの路線は継続してほしいし、次こそ僕の笑いのツボを刺激してほしい。

 ところで、「パラサイト・デブ」の作中に出てくるしりあがり寿氏の漫画は、本編を食うほど面白かった(失礼)。負けるな、京極さん! 



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