東野圭吾 35 | ||
毒笑小説 |
『怪笑小説』に続く、お笑い短編集第二弾。しかし…残念ながらさっぱり笑えない作品が多いかな。文章で笑わせるのはやはり難しい。
冒頭の「誘拐天国」。田舎育ちで「お受験」なんか知らない僕にはピンと来ない点もあるが、これはもろに現代の教育問題である。続く「エンジェル」は環境問題じゃないか。社会派作品が2編続き、笑う以前に考えさせられてしまった。「マニュアル警察」もこの御時世じゃ笑えないなあ…。
「殺意取扱説明書」は女性が読んだら切ない話に違いない。「つぐない」は、東野さんご自身が自分で読んでも切ない話と語っているだけあって、本当に切ない。
笑えないけど注目されるのは、「本格推理関連グッズ鑑定ショー」。この作品は、『名探偵の掟』を読了してから読むのをお勧めしたい。というより、単独で読んでも意味がわからないだろう。
もちろん、純粋に笑える作品もある。「手作りマダム」はありそうな話である。スネ夫のママのような、マダムの胡散臭い言葉遣いがいい。少々マダムが気の毒な気もするが…。最もツボにはまったのは「ホームアローンじいさん」。このじいさんの奮闘ぶりはあのカルキン君をも凌ぐ。「花婿人形」は…お約束通りの結末である。しかし、これも教育問題かな。
文庫版巻末に収録された、京極夏彦さんとの対談は必読だ。両氏による真面目なお笑い談義が展開されている。『秘密』と『どすこい(仮)』の誕生秘話がわかるかも? 泣くツボと笑うツボは紙一重とのこと。納得。
素晴らしきかな、お笑い。続編求む。