京極夏彦 13 | ||
続巷説百物語 |
読んで字のごとく『巷説百物語』の続編である。前作は一話完結で各編も手頃な長さに収まっていたが、今回は長い。
収録順に各編のベージ数が増し、全6編中の5編目となる「死神―或は七人みさき」では約250pにもなる。さらに、各編の繋がりが徐々に仄めかされ、全体としては連作長編に仕上がっている。「死神―或は七人みさき」で大団円を迎えるという趣向である。
京極堂シリーズが苦手な方にも、前作『巷説百物語』はお薦めできると僕は書いた。しかし、単純にエンターテイメントとして楽しめる前作に対し、本作は誰にでもお薦めできるかといえば難しいものがある。もちろん本作もエンターテイメントに違いないし、京極ファンにとっては堪えられない作品なのだが。
内容のハードさ、残虐さには触れておかねばならない。カバーをめくってみるといい。前作のカバー裏に掲載された「九相詩絵巻」どころではない、無残な錦絵の数々。デフォルメされた画風であるからこそ、残酷さが一層際立つ。目を背けたくなった方は、読まないことをお薦めする。これらの無残絵は、本作そのものなのだから。
山猫廻しのおぎん、事触れの治平…謎が多い一味の過去が明かされるのが興味深い。闇に生きる者たちの過去もまた、漆黒の闇。しかも、それらは今回の大事件に密接な関わりを持つのである。すべては「死神―或は七人みさき」における北林藩の事件へと繋がっていく。凝りすぎの嫌いはあるが…これだから京極作品は止められない。
書き下ろしで収録された最後の「老人火」は、北林藩の事件の六年後という設定である。又市たちの最後の仕掛けをもって、本作は幕となる。百介ならずとも、一抹の寂しさを感じてしまう。「御行奉為――」という決め台詞は、もう聞けないのか。
これでシリーズは完結か…と思ったら、引き続き『後巷説百物語』が連載されるらしい。「死神―或は七人みさき」と「老人火」の間に起きた事件を描くとのこと。京極さんならではの作品世界を、また堪能できそうだ。