舞城王太郎 03・『密室本』06

世界は密室でできている。

THE WORLD IS MADE OUT OF CLOSED ROOMS

2002/04/15

 『煙か土か食い物』で色々と昨年の話題をさらった舞城王太郎さんが、早くも『密室本』に登場した。

 万人受けしない作風は相変わらずだが、『煙か土か食い物』に比べると内容はかなりソフトである。もちろん一般読者から見れば十分ぶっ飛んでいるだろうが、あの暴走ぶりにはまった絶賛派の方にとっては物足りないのではないか。

 帯によると、本作は傑作青春エンタ(?)らしい。なるほど、主人公たちが成長と共に遭遇する事件の数々を描いている。青春物らしい臭い結末が用意されている。

 ある意味豪華な内容かもしれない。それぞれの事件の無意味さと馬鹿馬鹿しさ。この人なら容易に一つの事件で作品に仕立て上げるだろうなあ。某密室トリックはなかなか弾けていた。さらに、ばらばらの各事件が実は繋がるのだが、この繋がりがまた強引で無意味。こりゃもうこういう作風なんだと思い込むしかない。

 『煙か土か食い物』を評価する方の多くは、構成の緻密さを指摘しているが、僕にはどうしてもそうは思えないのである。この作家は天然だ、構想など何もなしに感覚だけでキーボードを叩いているに違いない。と、本作を読んで強く思った。そうだとしても、とりあえず作品として体裁が整っているのは大したものだが。

 問題は今後である。デビュー作のインパクトが強すぎただけに、この作風で生きていくなら徹底的に弾けるしかない。ついてきたい奴だけついてこい、くらいの心意気で。

 途中まで読んで放置してある『暗闇の中で子供』を、最後まで読むべきか。まったく評価しようがない作家である。



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