舞城王太郎 15


イキルキス


2010/08/24

 講談社曰く、「真夏のMAIJO祭!!」開催中! なのだそうだが、『獣の樹』『NECK』に続いて届けられた最新刊は、『みんな元気。』以来の短編集である。『みんな元気。』の理解不能さに、個人的には頭を抱えたのだが、さて今回は。

 表題作「イキルキス」。僕が通う西暁中学校で同じクラスの女子6人が続けざまに謎の突然死を遂げる。そんな中、クラスメイトの八木千佳子が訪ねてくるのだが…。名探偵本郷タケシタケシ登場、得意の巨大フォント攻撃、そして何だよその結末。全体的には中学生らしい恋模様…いや、中学生らしいポップで明るいエロとでも言おうか。

 続く「鼻クソご飯」。初出は「群像」2002年12月号とかなり前だが、今まで単行本に収録されなかったのがわかる気がする。タイトルからインパクト大だが、その意味は男性読者の多くが納得するだろう。内容は、おそらく舞城作品で最もエログロ描写がきつい。宮本輝氏の血管がぶち切れそうだ。しかし、モラルだの常識だのクソ食らえという勢いが、不思議とぐいぐいと読ませるパンキッシュな1編。賛否ははっきり分かれるか。

 最後の「パッキャラ魔道」が、個人的な一押し。冒頭はハリウッドっぽいアクションヒーローものかと思いきや、その後は波乱万丈な家族の物語。この短さによくぞこれだけのイベントを盛り込んだものだ。少年らしい苛立ちや家族へのアンビバレントな感情が根底にあるが、全体的には一応前向きか? あらすじを書くのは不可能。「鼻クソご飯」にも言えるが、読みにくいけどリズミカル。読むんじゃない、聴く、そんな1編。

 熱心な舞城ファンには、知った風なこと書いてんじゃねえよと言われそうだが、ご容赦ください。本作を読んで、短編の方が舞城王太郎の良さが出ているように思った。これまた『みんな元気。』はあんなに貶しておいて勝手なこと書いてんじゃねえよと言われそうだが、だってそう思ったんだもん。理解できたなどとは申しません、ええ。

 ただ、身を委ねることはできた。久々に波長が合った作品集かも。



舞城王太郎著作リストに戻る