万城目 学 02


鹿男あをによし


2007/05/10

 ぎゃははははは。デビュー作『鴨川ホルモー』はあくまで京都の四大学による対抗戦だったが、今回はすごいぞ。何たって日本という国の存亡が懸かっているのだ。

 大学の研究室に所属している「おれ」は、誤って助手のデータが保存されていたPCを初期化して以来(バックアップくらいしとけ)、居心地が悪い。そんなある日、二学期限定で奈良の私立女子高に講師として赴任することになったのだが…。

 当然ながら僕は女子高に立ち入ったことはないが、「おれ」が赴任早々に浴びる洗礼はこりゃきついで。物語上重要人物である生徒の一人、堀田イトに最初から悪い印象を持ってしまった。すっかりまいっていた「おれ」の前に現れたのは――。

「さあ、神無月だ――出番だよ、先生」

 前作に引き続いて対抗戦である。「おれ」が赴任した女子高には京都、大阪にも系列校がある。三校による運動部の対抗戦「大和杯」で、剣道部を率いる「おれ」。国体選手がいる京都、打倒京都に燃える大阪を相手に、部員三人の弱小奈良がどう挑むかは読んでください。この際日本の存亡はさて置き、純粋に乙女たちの勝負を楽しみたい。

 あまりの壮大さにジャンルの垣根などもはや無意味だが、歴史ロマンという側面があることには触れておきたい。高校時代、日本史が嫌いで嫌いでしかたなかったが、本来歴史は面白いはずなんだ。歴史の教科書が面白くないだけなのだ。言い訳か。

 前作の京都に続き、今回の主な舞台は奈良。前作が霞んで見えるほど突拍子もない話を当然のように受け入れられるのは、土地柄も理由の一つだが、何よりも万城目さんの力量が大きい。国の危機が迫っているのにこんなに楽しいのはなぜだ。わかりやすいのに、魅力を伝えるのは難しい。そこに万城目学のすごさがある。

 最後の最後で、ようやく堀田イトを許す気になれた。次回作の舞台は大阪。



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