万城目 学 03


ホルモー六景


2007/12/11

 万城目学さんの新刊は、タイトル通り「ホルモー」にまつわる六つの物語を収録した、いわば『鴨川ホルモー』外伝とでも言うべき作品集である。帯にデカデカと書かれているように、テーマは「恋」。当然ながら、前作を未読の読者にはさっぱり楽しめない。

 前作では、京都大学青竜会の視点で物語が進んだが、今回は他の三大学、立命館大学白虎隊、京都産業大学玄武組、龍谷大学フェニックスの視点からも描かれているのが興味深い。また、前作に登場したキャラクターの意外な一面が描かれる。

 女同士の友情が崩れるときとは、「鴨川(小)ホルモー」。BGMは是非ワーグナーの「ワルキューレの騎行」で。関係修復できるといいが…。

 本作の一押し、「ローマ風の休日」。京大青竜会の楠木ふみが登場するが、好感度が大幅アップするのは間違いなし。自分も不器用だからわかるが、努力している分だけ彼女が偉いな。京都の町並をアレンジした粋な数学の問題も素敵。

 実在の人物を題材にしているとだけ言っておこう、「もっちゃん」。ああ、なんて残酷な取り違え…。タイトルくらいは知っているこの古典作品、読んでみようかな。

 なぜか舞台は同志社大学、「同志社大学黄竜陣」。え、このタイトルは? 前作で最も嫌いな人物がさらに嫌いになった。ま、知らぬが仏ということで。

 なぜか舞台は東京、「丸の内サミット」。多くは語るまい。ほら、あなたの周りにも…。ホルモーが取り持つ縁ってのもいいんじゃない。

 最後の「長持の恋」。多くは語るまい。というか語れない。設定だけならあまりにも陳腐だ。しかし、「ホルモー」という作品世界の中では受け入れられるのだからあら不思議。自動車学校で苦戦する珠美に共感できたのも一因かもしれない。僕も大苦戦したし。

 まだまだネタがありそう。シリーズ続行を望む。



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