麻耶雄嵩 13 | ||
隻眼の少女 |
長編としてはあの『神様ゲーム』以来になる。麻耶雄嵩の理解者とは言えない僕が、本作に期待したのは、何かやらかしてくれること。麻耶作品に限らず、現代本格に対し、結末にびっくり仰天! なんてことを求めるのは酷に過ぎる。
…うーむ、支障のない範囲で述べると、隻眼の美少女探偵・御陵(みささぎ)みかげに萌える静馬、とでも言おうか。どうですかこの装丁。みかげに扮した美少女の写真を大胆に配している。一体どんな読者層を狙っているのだろう。
歴代当主の妻が、スガル様として崇められてきた琴折(ことさき)家。その役目は、長女に引き継がれる。ところが、次代スガル様となるはずの三つ子の長女・春菜が惨殺された。探偵修行中の御陵みかげが調査に乗り出すが、やがて次女の夏菜も…。
という、絵に描いたような横溝正史っぽい連続殺人もの。別にみかげに萌えない僕には少々退屈な展開。二転三転はするけれど、盛り上がることもなく第一部は終わってしまった。しかし、僕は麻耶さんの術中にはまっていたのだ。第二部に入ると…。
他の作家が同じことをやったら読者は怒って本を投げつけるだろう。特に麻耶ファンではない読者も、本作にはやはり怒るだろう。麻耶作品の傾向を知っている読者だけが、まあ麻耶さんならやりかねないよなあと許す気になるだろう。
いつか誰かがこの手を使うだろうとは思っていた。199X年、某大物作家の某作品(明かせません)で、こういう手があり得ることは既に指摘されていたのだ。21世紀に入って10年が過ぎようという今、ようやく麻耶雄嵩によって採用されたわけである。少なくとも、本作以前にここまで大々的に「禁じ手」を適用した作品を僕は知らない。
一応伏線があったことは最後にわかるが、真面目に考えるだけ無駄だと言っておこう。こんな真相、依頼者に何と報告すればいいのだろうか。それにしても、孤高の本格作家麻耶雄嵩に、次回作以降のネタが残っているのか、気がかりだ…。