麻耶雄嵩 15


貴族探偵対女探偵


2013/12/04

 個人的には可もなく不可もない作品だった『貴族探偵』の続編である。何とびっくり、2014年版本格ミステリ・ベスト10の第1位に輝いた。急遽感想を書くことにした次第であるが、本作を読む予定がある方は、念のため以下の文章を読まないことをお薦めする。

 全5編、タイトル通り貴族探偵と女探偵が対決(?)する。偉大な師匠の跡を継いだ、新進気鋭の女探偵・高徳愛香。本格ミステリのお約束として、彼女の行くところに事件あり。そして、なぜかいつもあの男…「貴族探偵」がいるのだった。

 最初の4編のパターンは一貫している。殺人事件が発生すると、まず愛香が推理を披露し、真犯人を指名する。一読したところ筋は通っていそうである。ところが、貴族探偵の推理でひっくり返され、愛香の探偵としての面目は丸つぶれ…。

 貴族探偵が自ら推理しないのは前作と同様だが、存在感は前作より大幅に増している。愛香を見下す憎々しげな態度はどうだ。愛香はこの男が探偵を名乗るのが納得できないようだが、事件を解決したのはどっちだと言われると返す言葉がない。

 嗚呼、貴族探偵に連戦連敗の愛香…。焦りから見落としてしまうのか。とにかく愛香のしおれっぷりが気の毒でならない。他の多くの事件は解決に導いているものの、失敗の噂が広まり、愛香の探偵としての評判に影を落とすことになる。

 そして5度目の対決である。いつものごとく、女探偵さんのお手並み拝見と言わんばかりの貴族探偵。またまた失敗に終わるのか、名誉挽回、汚名返上なるか。ひねくれ者の麻耶雄嵩がどうまとめるのか、興味津々で読み進めると…。

 えぇぇぇぇぇ…何じゃそりゃあぁぁぁぁぁ!!!!! 貴族探偵はやはり人知を超越した存在だった。最初の4編はすべて壮大な前振りだったわけである。すべてはこのシニカルな結末のため。ある意味、愛香にとってはこの方が屈辱か。あまり期待しないで手に取ったけれど、前作よりもずっと楽しめた。しかし、これが第1位でいいんだろうか?



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