道尾秀介 17


カササギたちの四季


2011/02/24

 案の定、帯に「直木賞受賞第一作」の文字が躍った、道尾秀介さんの最新刊である。近年の傾向からすれば、色々な点で意外性のある作品集だ。

 「リサイクルショップ・カササギ」は開店して2年、赤字経営が続く小さな店。謎めいた事件があるとすぐ首を突っ込む、店長の華沙々木(かささぎ)。いつもガラクタを高値で買い取らされる、副店長の日暮。よほど居心地がいいのか、いつも入り浸っている中学生の奈美。

 全4編の基本フォーマットは決まっている。日暮が強欲和尚にガラクタを高値で買い取らされる、お約束のオープニング。『マーフィーの法則』の原書を愛読する華沙々木が、得意の推理で謎を解き明かす! そして天才・華沙々木にうっとりする奈美…。

 そんな本作は、久々にミステリーらしい作品であると言える。第144回直木賞受賞作『月と蟹』に代表されるように、近年の道尾作品はミステリーと距離を置きつつあった。道尾さんご自身が、ミステリーではないと明言していたのである。

 また、かつての読者の胸をえぐるような重さ、トリッキーさは影を潜め、気軽に読める作品になっている。こういう言い方を道尾さんは嫌うかもしれないが、「日常の謎」路線に近い。ユーモアタッチであることも道尾作品としては異例だろう。

 ところで、ワトスン役の日暮は、実は…。この点にミステリーとしてのひねりがある。2人の関係からあるシリーズを連想したが、もちろん書けません。

 「春」。この程度の謎は、華沙々木にとっては小手調べといったところ。ところが「夏」になると…驚異の飛躍が炸裂! こういう心理、自分に甘い僕にもよくわかる気がする。「秋」。奈美の過去に何があったのか、2人とどのように出会ったのかが明かされる。華沙々木の推理が家族を救う! 「冬」。いつもやられる住職の寺に呼ばれた3人。食えない住職の意外な顔とは。華沙々木の推理が家族を…救ったのか?

 内容もほっこり、読後感もほっこり。寒い季節にはいいかもね。



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