道尾秀介 22


鏡の花


2013/09/10

 最初にお断りしておきたい。本作を読む予定があるなら、大したことなど書いていない以下の拙文は読み飛ばし、まっさらな状態で読んでほしい。と、『光媒の花』の感想に書いたが、本作は『光媒の花』の姉妹編だという。

 『光媒の花』を未読でも支障はないが、構成上の共通点はいくつかある。全6編が何らかの繋がりを持ち、なおかつ視点人物が入れ替わる点は、『光媒の花』を踏襲している。そして何より、『光媒の花』以上に、まっさらな状態で読むべきである。

 拙文はもちろん、間違ってもネット上の感想に目を通してはならない。困った。何を書くべきか、実に困った。いっそのこと、何も書かないのが正解かもしれない。

 本作は複数の家族の視点で描かれる。第2章までで十分に切ないが、第3章に入ってすぐに、違和感を感じるだろう。え??? すぐに前の章を読み返す。……。以後、第4章、第5章と読み進むほど違和感が強まる。最終章を前に、悪い予感が頭をよぎる。

 というのも、よく似た手法を用いた、あるミステリー作品が思い浮かんだからである。その作品は見事にフィニッシュでこけてしまった。うーむ、最終章だけが約100pと長いが、読み終えれば違和感が解消するのだろうか。合理的な解決にはしようがない。

 などとグダグダ考えてしまったが、結論から言うと見事なフィニッシュでした。ある意味、ミステリー的な「オチ」と言えなくもないが、敢えて「オチ」とは言うまい。ほんのわずかなすれ違いが生んだ、第5章までの辛い流れが、最終章で一変する。

 無粋を承知で本作を解釈すると…以下反転してお読みください。ありきたりに言うなら、パラレルワールドか、あるいはすべて夢だったか。うーむ、こうして言葉にすると本当に無粋で、我ながら嫌になる。ミステリー読みの限界を感じる。

 僕はおそらく、道尾さんにとって良い読者ではない。近年、薄々感じてはいたが、本作を読んでその事実を端的に突きつけられた。それでも懲りずに追いかける。



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