湊かなえ 06 | ||
往復書簡 |
長編なのかと思っていたら、まったく独立した中編が3編。『往復書簡』のタイトル通り、全3編とも手紙のやり取りのみで構成されているのが特徴である。といっても、こういう構成には先例があるし、目新しいわけではない。
「十年後の卒業文集」。事故に遭ったらしい同級生の消息を探る手紙の応酬。本当に本人か? 何を企んでいるのか? 互いを疑う2人。事故の真相自体は、湊かなえ作品にしては拍子抜けするだろう。ところが、本当の仕掛けは…。
「二十年後の宿題」。入院中の小学校時代の恩師・竹沢に、どうしても気になる6人の教え子に会ってきてほしいと頼まれた大場。そして律儀に1人1人会いに行くと、竹沢から聞いていない事実を知った…。依頼を受ける方も受ける方だが、依頼した竹沢はアンフェアで自分勝手に過ぎるだろう。最後にそんなひねりでごまかされてもねえ…。
「十五年後の補習」。国際ボランティア隊としてP国に2年間派遣中の男性と、日本に残された女性。本作中最も遠距離の往復書簡である。しかし、手紙の内容はお互いの近況よりも「あの出来事」に終始している。あーでもない、こーでもない、私が悪い、いや俺が悪い。こういう誠実さの押し付け、どこかで読んだような。これで愛してるとか言われてもねえ…。
手紙形式の作品に共通した問題だが、説明口調でどうしても手紙としては不自然な印象を受ける。それはともかく、どの話もさっさと直接聞いちゃえよと言いたくなるものばかり。野暮なのはわかっていますよ。それじゃミステリーにならないし。
形式は大きな問題ではない。最も気になるのは、作品のパターン化が顕著であること。半分の5作品を読んだ限りは、『告白』以降やっていることに大差はない。本作はドロドロは控え目だし、どちらかといえば結末はきれい。本作の売りは何か?
文庫版に追加収録された最後の「一年目の連絡網」で、3編の繋がりが明らかに…なんてことがあったらよかったのだが、わずか10pの掌編に大きな期待はできまい。案の定、あってもなくてもいいような内容だった。いや、ない方がよかったな。