湊かなえ 10 | ||
白ゆき姫殺人事件 |
読む本を物色していて何となく手に取ったが、あっという間に読み終えた。何しろ、本文は200pにも満たないのだ。ところが、本文の後に関連資料があり、これが80p程度ある。本文以外の割合が大きいことが、本作の特徴と言える。
ある事件に関する取材記録という体裁をとっているが、こうした関係者への証言形式は目新しくはない。事件は『夜行観覧車』のようにありそうな話であり、マスコミは無責任に面白おかしく書き立てる。そういう点でリアリティはあるのだが…。
呪いだの何だの、いずれも噂話の域を出ないんだよなあ。序盤からある人物が容疑者扱いされるが、取材をしているライターらしき男が誘導している面もあるだろう。うーむ、このまま読んでいて何か驚きがあるのかどうか…。
正直、本文だけだったら見るべきところはない。じゃあ何が本作の売りなのかというと、関連資料であると言うしかない。内容は、マンマローというSNSのログや、週刊誌や新聞の記事、ブログなどだが、作り込みが実に細かいんだよねえ。
マンマローというのはどう見てもTwitterがモデルだが、ライターの男が取材ネタをばらしまくっているのは大いに呆れた。現実に、世界中から見られているという意識に欠けるユーザーは多いが、彼が一流にはなれないことがわかる。
何か事件が起きれば、たとえ匿名報道でも、誰かが本名から職業から個人情報を調べ出し、あっという間にネットに公開されるご時世である。時代を取り入れた臨場感は評価してもいいだろう。でもね、関連資料はあくまで本文の補足である。
一応どんでん返しらしい結末だが、中身は薄っぺらとしか評しようがない。元々湊かなえ作品に厳しい僕だが、ここまで薄っぺらということはなかったぞ。深読みするなら、噂に反応する大衆の愚かしさを描き出すために、敢えて軽い中身にしたのかなあ…。
いっそのこと、全編関連資料で構成すればよかったのでは? 『電車男』みたいに。