宮部みゆき 38


ドリームバスター2


2003/04/07

 早くも届いた宮部みゆきさんの新刊は、『ドリームバスター』シリーズ第2弾。謎を残しつつ終えた前作だが、さて今回は…。

 地球人の夢の中に潜む邪悪なるものを退治するのがD・B(ドリームバスター)の任務のはず…だが、今回はそう単純にはいかないというお話である。実際、前作はラスト一編を除いて勧善懲悪ものと言えなくもない。詳しく書くことはできないが、今回の二つの任務は、共通した特殊なケースであるとだけ言っておこう。

 前作の謎を引きずりつつ始まる「目撃者」。今回のD・P(ドリーミングパーソン)のような心理は、誰でも持ち合わせているものではないか。彼女の夢は彼女の心象風景であり、僕の、あなたの、心象風景でもある。そこに小生意気なシェン少年の生い立ちと、彼の内面を絡める料理法はさすが。この顛末が今後にどう響くのか、心配される。

 次の「星の切れっ端し」は、よりやっかいな任務だ。新米D・Bの最初の任務としては重すぎた。大災厄後の新連邦において、D・Bはいわば汚れ役を担う存在なのだから。前作のラスト同様、これまた謎を残すずるい終わり方。前作の謎との関連は? 新連邦に渦巻く陰謀は一つではないのか? ああ、幼いD・Pにどうか救いの手を。

 このシリーズは、分類上はSFでありファンタジーなのだろう。僕自身こうしたジャンルに精通はしていないし、たとえ宮部作品のファンでも苦手だという読者もいると思う。しかし、どこを切ってもやはり宮部印の作品だ。ここに描かれるのは人間のもつ両面。善に偏らず、悪から目を逸らさない宮部みゆきの二面性。

 この点に対して、従来の宮部作品から一歩も踏み出していないというやや手厳しい意見も耳にした。正直、一理あると思う。だが、逆に言えば従来の宮部ファンが安心して読める作品であるということだ。僕自身は、完結しないと何とも言えないと思っているが。

 核心に迫ったような迫っていないような。まだまだ先は長い。To be continued...



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