宮部みゆき 35


ドリームバスター


2001/11/25

 宮部みゆきさんは『蒲生邸事件』で第18回日本SF大賞を受賞している。この縁なのか、日本SF作家クラブにも名を連ねている。そんな宮部さんから、初のSFらしいSF作品が届けられた。その名も『ドリームバスター』。

 詳しく書いたら未読の方の楽しみがなくなるので、簡単に言おう。彼らD・B(ドリームバスター)は、別世界から我々の夢の中へとやって来る。人の弱みに付け込む邪悪なるものを捕獲するのが、彼らの任務だ。悪夢の素を退治するから、ドリームバスターというわけだ。従来の宮部作品にはない、この画期的な設定はどうですか。

 「プロローグ JACK IN」。16歳のシェンと師匠マエストロのコンビが初登場だ。8歳の娘を持つ道子の夢の中が舞台。彼女の夢には、彼女自身が8歳の頃目にした光景が深く関わっていた。そこに付け込む邪悪なるもの。ドリームバスターの任務遂行には、夢を見ている本人の協力が不可欠。夢の中でどうやって協力するのかはさて置き。『模倣犯』ほどではないが、「邪悪なるもの」は実に嫌な奴だ。

 「First Contact」は、「週刊アスキー」と「e-NOVELS」で同時連載された、このシリーズとして最初に書かれた作品である。27歳にしてある事実を知った伸吾。僕が同じ立場だったらそりゃ驚くよな。その時、気持ちは変わらないと言い切れるだろうか。変わらないと信じたい。その恩はあまりにも大きいのだから。またまた何て嫌な奴だ。

 以上の2編は独立した話としても楽しめるし、ここまではおそらくプロローグだろう。ドリームバスターに関する基礎知識を得たところで、ここからが本番。

 「D・Bたちの”穴”」では、シェンたちが暮らす「新連邦」の様子が、D・Bたちの複雑な背景が垣間見える。「大災厄」の傷跡が生々しく残るこの世界では、確実に何かが動いている。――僕は? 何者なんだ。謎が深まりつつ、今回はここまで。

 このシリーズはまだまだ続くとのことなので、今のところ評価は保留かな。大いに期待できることは間違いない。ああ、気になるなあ。To be continued...



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